様々な心理療法~交流分析⑦~「人生脚本」あなたを縛りつけ苦しめている脚本を書き換えよう!

今日は、交流分析7つの要素のうち、「人生脚本」について見ていきたいと思います。

これまでの記事をまだご覧になっていない方や内容を復習したい方は、下記リンクからそれぞれのページに飛べますので、是非ご参考ください。

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①自我状態 (自分の中の傾向、心の成り立ち、エゴグラム)

②人生態度 (人生の基本的立場)

③ストローク (相手の存在を認めるすべての言動、ふれあい)

④対話分析 (コミュニケーション)

⑤時間の構造化 (時間の過ごし方) 

⑥ゲーム分析 (不快な心理ゲーム)

⑦人生脚本 (人生のシナリオ、価値観)

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「人生に脚本がある」、と言われると、何だかドキッとしませんか。

でもそれは、運命や宿命といった類のものではありません。

あなたが生き方を決めるうえで軸となっている価値観や筋書き、といったようなものです。

「~であればこうなる。」「~は~となるものなのだ」というシナリオ設定のようなもので、

そんな人生のプログラミングともいえる脚本を、あなた自身がなんと幼少期から作りあげているのです。

交流分析では、あなたの人生脚本を見直し、その脚本があなたの今の人生を苦しいものにしているのであれば、

より理想的な脚本に書き換えていくことを目的としています。

それでは、今日も一緒に勉強していきましょう。

人生脚本とは?

交流分析における人生脚本とは、「無意識に繰り返される人生のパターン」と定義されています。

人生の筋書きと言うべきか、「こうなるものだ」という、決められたストーリーやプログラムとでも言うと分かりやすいでしょうか。

幼少期に親の影響などをもとに自分が決断し、

その後の様々な経験を経て「やっぱりそうなんだ」と補強され、正当化されていきます

ついには、違う状況や場面でも、その脚本に沿って無意識に同じような選択を繰り返してしまうようになりますが、

それは決して運命や宿命ではなく、過去の自分が作り上げてきた脚本であり、

いつでも自分の意思で書き換えることが出来るものであるとされています。

今のあなたが同じような悲劇を繰り返したり、同じようなパターンで不幸な結末を迎えているのであれば、

望ましくない脚本から脱却し、より理想的な脚本に書き換えることで、人生をより良いものにしていくことが出来るはずです。

どのように人生脚本は形成されるの?

私たちは幼少期に、両親からの関わりの中で、言葉にはされていなくても視線や態度、声色などから、様々なメッセージを感じとっています。

小さい頃の「お父さんやお母さんが~するのは、~だからだろう」という感情体験を元に、

少しづつ、「~なら、~のようにやろう」と行動基準となるべき脚本が作られていきます。

そして大人になるにつれ、「やっぱり、いつもこうなるんだな」とその脚本が補強され、

無意識にその脚本に従って生きるようになります。

人生において重要な場面、例えば結婚や就職、育児、死に対することなどでは、

その脚本の影響がより強く出やすいと言われており、

「結局こうなるんだ」「そういう運命なんだ」と、自分の脚本をより強固なものにして、その脚本に従った言動や選択を繰り返してしまいます。

人生脚本を形成する禁止令とドライバーを知ろう。

幼い頃からの親からのメッセージ、多くは「しつけ」として与えられた価値観が、

そのまま私たちの人生脚本に大きな影響を与えていると言われていますが、

その価値観や思い込みが、今の生きづらさに繋がっていることがあります。

その価値観や思い込みのことを、交流分析では「禁止令」や「ドライバー」と呼んでいます。

交流分析の「脚本分析」では、自分自身を縛り苦しめているこの禁止令やドライバーという価値観に気付き、

それを緩めることで、人生脚本を書き換え、生きづらさを解消していくという目的で行われます。

あなたを縛る、12の禁止令とは?

まずは、両親から受ける無言のメッセージのうち、12個の「禁止令」と呼ばれるものをご紹介します。

「~するな」という親からの命令や指示を、大人になってからも無意識に守ってしまうと、

自分の中で我慢したり抑圧したりすることが癖になり、人生において大きな影響を与え続けます。

12個の禁止令から、自分に当てはまるものがないか、考えてみましょう。

  1. 存在するな
  2. 成長するな
  3. 成功するな
  4. 重要であるな
  5. 感情を感じるな
  6. 健康であるな・正気であるな
  7. 仲間になるな
  8. 実行するな
  9. 子供であるな
  10. 信用するな・愛するな
  11. 男であるな・女であるな
  12. 考えるな

少し分かりにくいものもありますかね。

1つずつ詳しく見ていきましょう。

禁止令(1)存在するな。

「お前さえいなければ」「生まなければよかった」「本当は生む予定じゃなかった」など、自分の存在を親に否定された影響で、

「自分には生きている価値がない」「自分なんていない方がいい」と自己否定を感じやすくなり、

自分自身の身体や命を大切にできなくなってしまいます。

禁止令(2)成長するな

「まだ出来ないからやってあげる」「大変だからやらなくていいよ」と、親が過保護になり過ぎたり、何でも代わりにやってあげていると、

「手間をかけさせた方が喜んでもらえる」「子供のままでいた方が愛される」という思い込みから、成長を拒み1人では何もできなく他人を頼りにする、依存傾向になってしまいます。

禁止令(3)成功するな

「どうせうまくいかない」「何をやってもダメだ」と言われ続けると、

「自分は成功できないことを期待されている」「成功してはいけない」という思い込みを持つようになり、

成功したり幸せになりそうになると、ソワソワしたり落ち着かず、パニックになってしまいます。

禁止令(4)重要であるな

親から放置されたり無関心であったり、「子供は口を出すな」と言われて育つと、

「自分は重要であってはいけない」と思い込み、自己主張ができず消極的になり、注目を浴びることや責任を負うことを極端に恐れるようになります。

禁止令(5)感情を感じるな

「泣くな!」「怒っちゃダメ!」など、感情を抑圧された経験から、

自然な感情を表現してはいけないと思い込み、喜怒哀楽を表現できず感情を押し殺すようになってしまいます。

禁止令(6)健康であるな・正気であるな

病気になったときにだけ親から優しくされたり、身体の弱い家族ばかりが構ってもらえていたという経験をすると、

「傷ついていれば優しくしてもらえる」と、自分を傷つける行為で相手の関心や同情を引くようになってしまいます。

禁止令(7)仲間になるな

「あの子と仲良くしてはいけない」「うちの子はそういうことは好きじゃないの」など、親が子供の交友関係を選んだり、子供の気持ちを勝手に決めつけたり、

子供の人間関係に親が過剰に干渉してしまうと、

人と打ち解けて仲間になっていくという経験がないまま大人になってしまいます。

禁止令(8)実行するな

具体的な理由の説明がないまま「~するな」と禁止され自由を制限される経験をすることで、

一人では何もできないような気がして、常に誰かの許可がないと何もできないようになってしまいます。

禁止令(9)子供であるな

「お兄ちゃん/お姉ちゃんなんだから、わがまま言わないの」と言われて育つと、

「わがままを言ってはいけない」「人に迷惑をかけてはいけない」と、自分の気持ちに正直に楽しんだり子供らしく振舞うことが出来なくなります。

年齢以上に強がることを強要された結果、自分の気持ちよりも他人の気持ちを優先したり、他人の世話ばかり焼いてしまうようになります。

禁止令(10)信用するな・愛するな

「近づかないで」「忙しいからあとにして」など、親が忙しく構ってもらえなかった経験から、

人に対して一歩引いたスタンスを取ってしまい、心の底から相手を信用したり愛することが出来なくなります。

友人関係や職場、恋愛などにおいての人との距離感が分からず、相手に気持ちを素直に表現できません。

禁止令(11)男であるな・女であるな

「本当は女の子が欲しかった」「あなたが男の子だったらよかったのに」というように、

自分の努力ではどうにもならない性別への不満を親に言われて育つと、

「自分は自分のままではダメなんだ」「男/女である自分には価値がないんだ」と自信がなくなってしまい、

劣等感を感じやすく、相手の評価を過剰に気にするようになってしまいます。

禁止令(12)考えるな

「親の言うことがいつも正しいんだから言うとおりにしておけばいい」「あなたは何も考えなくていいの」など、

自分の意見は否定され親の言いなりになることを強要され続けると、

自発的に考えることをやめ、情報や指示を思考停止して受け入れるようになり、自分なりの考えを持つことが出来なくなります。

あなたを苦しめる5つのドライバーとは?

ドライバーとは日本語では、「駆り立てるもの」とでも言いましょうか。

禁止令とは反対に、幼少期に親から受け取ったメッセージの中から、

「こうあるべきだ」とか、「こうしなさい」という、「~しろ」という指示や命令のことです。

拮抗禁止令や対抗禁止令と呼ばれます。

親からの影響で無意識に「守らなければならない」と思い込んでいると、

それが人間関係のトラブルや生きづらさに繋がっていることがあります。

以下の5つがあります。

  1. 完璧であれ!
  2. 努力せよ!
  3. 人を喜ばせよ!
  4. 急げ!
  5. 強くあれ!

禁止令に比べると分かりやすいかもしれませんが、1つずつ詳しく見ていきましょう。

ドライバー(1)完璧であれ!

「もっとしっかりしなさい!」と親から厳しい躾を受けてきた影響で、

「完璧であらねば」「失敗は許されない」と無意識に信じ込んでしまい、自分にも他人にも厳しい生き方をしてしまいます。

ドライバー(2)努力せよ!

「もっと努力しなさい!」と、何事も一生懸命に取り組むことが美徳だと教えられて育つと、

「まだまだ頑張れる、もっと頑張らないと」「最後まで全力を尽くさないと」「努力は必ず報われる」と信じ込み、

周囲に助けを求めたり、必要なタイミングで休んだり退いたりということが出来なくなってしまいます。

ドライバー(3)人を喜ばせよ!

「人の役に立つようになりなさい!」「自分を犠牲にしてでも周りのために尽くしなさい」と教えられて育つと、

人に役に立つことで自分に価値があると感じるようになり、人から拒否されたり否定されることを極端に恐れるようになります。

また、他人の役に立ちたい、周りを喜ばせたいという気持ちが強すぎて、お節介が度を過ぎて、受け入れられないと大きく落胆します。

ドライバー(4)急げ!

「早くやりなさい!」といつも急かされた経験があると、

常に焦りや追われているような感覚があり、落ち着いていられなかったりじっとしていられず、

ひとつのことをじっくりやり遂げたり、最後まで取り組むことが出来ずに中途半端になってしまいます。

ドライバー(5)強くあれ!

「メソメソするな!強くなれ!」と、落ち込んでいる自分を親から受け入れられずに育つと、

「弱いことはいけないこと」と思い込んでしまい、弱い自分を無意識に否定するようになり、

「辛い、苦しい、助けて欲しい」という弱音が吐けなくなってしまいます。

ドライバーを書き換えよう!

このような禁止令は、まだ小さくて合理的な判断ができない頃に、

親の顔色を見て、置かれた環境に適応するために、知恵を振り絞った結果として身に付いた生き方です。

あなたが今まで人生に取り入れ続けている禁止令やドライバーには、子供心でそうせざるを得なかった理由があるのです。

そうした理由に気付いた上で、

こうした幼少期の判断で身に付いた生き方に「縛られている」と気付いたのであれば、

そのドライバーからあなた自身を解放してあげましょう。

あなたはもう、親から言われた価値観に縛られている小さな子供ではありません。

交流分析の基本哲学である「今ここ」という概念を思い出してください。

今のあなたがどう生きたいかを決断した瞬間から、幼い頃に作りあげた人生脚本を、新しい脚本に書き換えることが出来るのです。

「完璧でなくていいんだよ」と、あなた自身が、心の中にいる小さな頃のあなたに言ってあげるのです。

一生懸命、親の言いつけを守っている当時のあなたを抱きしめてあげて、アドバイスしてあげましょう。

「完全でなくても、適当なくらいでいいんだよ。」

「そんなに頑張らなくても、このままでいいんだよ。」

「周りの反応でなく、自分の気持ちを優先していいんだよ。」

「ゆっくり、自分のペースでやっていけばいいんだよ。」

「弱くてもいいんだよ。もっと、自分の気持ちを表現してもいいんだよ。」

そんな風に少しづつ、今のあなたが自分自身の言葉や行動で、自分を縛り続けてきた禁止令やドライバーを緩めてあげましょう。

決して、当時の自分の決断や生き方を否定しないでくださいね

小さい頃から一生懸命周りに適応して自分を押し殺して生きてきたなんて、なんて健気で愛しい生き物なんだと思いませんか?

私はそう思います。

大人になったあなたが、きちんと迎えに行ってあげてくださいね。

大丈夫だよ。もう苦しまなくて良いよ、と、新しい価値観を植え付けてあげましょう。

それは、今、ここにいるあなたにしか、できないことなんですよ。

■最後に。

人生脚本はおよそ6歳~10歳頃までに出来上がると言われています。

人生はドラマだ!なんてよく言いますが、そんなに早くに脚本が出来ていたなんて、考えたことも無かったのではないでしょうか?

私も初めてこの概念を知った時、何度も昔の小さい頃の自分に会いに行ったような気持ちになりました。

私たちの人生は私たちの価値観で形成されています。

その価値感は幼い頃からの家庭での関りから作られる部分が多いものではありますが

交流分析の基本哲学である「今ここ」を見つめることで、何度でも書き換えられるものであり、

親の力ではなく、誰の力でもなく、自分の力で自分の人生を作り上げていくんだということを、

そしてその力が私たち一人ひとりみんなに備わっているんだということを、

力強く教えてくれる理論だと感じました。

私たちはいつでもどこからでも変われるし、成長できます。

そして私たちが変わっていくことで、自分の問題を解決し、人生がより良いものになっていき、

世界はより生きやすい場所になっていくのだと思います。

交流分析の説明は、ここで一旦終わります。

最初から最後まで、長くなりましたが、一緒に勉強してくださりありがとうございました。

少し難しい部分もあったと思うので、何度も読み返してみたり、ご自身でも調べたりしてみてくださいね。

あなたが過去を見つめ直し、今の自分を考え、未来を変えていくための

何らかのきっかけや、ヒントになれれば嬉しいです。

神田華子でした。