様々な心理療法~交流分析⑤~「時間の構造化」あなたの時間の過ごし方は?

今日は、交流分析7つの要素のうち、「時間の構造化」について見ていきたいと思います。

これまでの記事をまだご覧になっていない方や内容を復習したい方は、下記リンクからそれぞれのページに飛べますので、是非ご参考ください。

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①自我状態 (自分の中の傾向、心の成り立ち、エゴグラム)

②人生態度 (人生の基本的立場)

③ストローク (相手の存在を認めるすべての言動、ふれあい)

④対話分析 (コミュニケーション)

⑤時間の構造化 (時間の過ごし方)

⑥ゲーム分析 (不快な心理ゲーム)

⑦人生脚本 (人生のシナリオ、価値観)

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あなたの人生は「どんな時間」で埋め尽くされていますか?

あなたは今のその「時間の過ごし方」に納得しているでしょうか?

今日の記事は、ちょっとそんなことを考えるきっかけになると思いますので、是非一緒に学んでいきましょう。

交流分析の時間の構造化とは?

健康な人間は、まったく刺激(ストローク)のない状態に耐えられないようにできています。

つまり、私たちは何の思考も行動も交流もせずに過ごすことは出来ないのです。

※ストロークとは、相手に働きかける言動(言葉、視線、態度など)のすべてを指します。詳しくはこちらでどうぞ。

そのため、私たちは毎日何かしらの行動をして日々を過ごしています。

当たり前のことを言っているようですが、私たちはみんな、自分で生活時間を計画している(構造化している)ということです。

交流分析での時間の構造化とは、私たちが日々どのように時間を過ごしているかに着目します。

具体的には、日々の生活の中でどのようなストロークを他者と交換しているか、その内容と密度と割合を測定していきます。

それにより、どのようなストロークが不足しているかが分かるようになり、必要なストロークを足していくことで、問題の改善を目指します。

交流分析の時間の構造化では、ストロークの密度により時間の過ごし方を以下の6種類に分類し、1日にどのようなストローク交換をどの割合で行っているかを分析していきます。

(1) 引きこもり

(2) 儀式

(3) 暇つぶし (雑談)

(4) 活動 (仕事)

(5) 心理ゲーム

(6) 親密さ (親交)

それでは今日も、1つずつ見ていきましょう。

(1)引きこもり 

他者との交流を持たず、自分の世界や部屋の中に閉じこもっている状態です。

実際の引きこもりだけでなく、物理的にはその場にいても、人と関りを持たないことも含まれます。

例えば一人で考え事をしたり空想にふけたり、相手を無視して自分だけの世界に集中することです。

幼少期の、特に両親からのストローク不足(拒絶や放置)により、自分の中でストロークを満たそうとした結果として、引きこもり時間が多くなることがあると言われています。

また、いじめや失恋など対人関係で深く傷ついた経験から、他人を信用できなくなり、引きこもり時間が増えることもあります。

引きこもりで人との交流を避ければ、誰ともストロークの交換がないので傷つくことはないので自分を守ることが出来ますが、心身の問題につながりやすい時間の過ごし方です。

(2)儀式

自己紹介や挨拶など、形式的なストローク交換です。

定型的なやり取りが多くストロークの密度としては低いと言えますが、

他人と深く関わらずとも肯定的なストロークが得られる安全な方法です。

(3)暇つぶし (雑談)

軽い表面的な雑談で、料理や車、趣味、天気の話など、これといった目的も生産性もない、たわいもないやりとりです。

雑談のテーマに深いテーマや内容はないものですが、ストレス解消になったり、自分と価値観や性格の合う相手を見つけるためのきっかけとなります。

また、表面的なことしか話さないため、傷つけあうというリスクも少ないストローク交換と言えます。

(4)活動 (仕事)

仕事や勉強、家事やPTA活動など、特定の目的を達成するためのストローク交換です。

生産的・創造的な内容で充実感を得られることもあれば、否定的なストロークを受けることもあります。

成果を得るための交流なので密度は高いと言えますが、

集団組織や家族の中で自分の役割をこなすためだけの時間なので、他者との交流の喜びや充実感に繋がらないこともあります。

色々な人とのストローク交換を得られることができますが、この時間が多すぎると、燃え尽き症候群や定年後うつを発症するなどの問題につながることもあります。

(5)心理ゲーム

相手をコントロールしようという目的が裏に隠されている、不快な結末で終わるコミュニケーションです。

次回詳しく説明しますが、密度の高いストローク交換ですので、家族や恋人などの親密な関係で起こりやすく、否定的なストロークを交換することになります。

根底には相手との関係を深めたいという気持ちがあるものの、

裏に隠された本心や目的を隠した状態で歪んだストロークを投げるので、歪んだストロークしか得られず、満足できずに何度も繰り返されてしまいます。

(6)親密さ (親交)

お互いの存在や価値観を承認し合う理想的な交流です。

お互いに相手の言葉や考えを受け入れ、信頼し合い、心を開き本音で語り合うことのできる、非常に密度の高いストローク交換です。

交流分析ではこの時間を少しでも多く持つことを目標としていますが、

そのためには「自分もOK、あなたもOK」という、自他肯定の関係が必要です。

他人と直接的に深く関わっていけば少しずつこの交流に近づいていくものですが、

自分をオープンに相手にさらけだすということは、その分傷ついてしまうリスクも高まることになります。

それでも私たち人間は本来、他人と親密に関わりたいという欲求を誰しも心に持っているものです。

あなたの人生の時間構造は?

交流分析の時間の構造化では、上記の6つの時間の過ごし方から、あなたの時間の過ごし方の傾向を見ることが出来ます。

時間構造のバランスが偏っていると、心身の問題を抱えやすいと言われており、

自分の時間の過ごし方に問題があると納得できるのであれば、その構造を少しずつ変えていくことで、生活に変化があらわれます。

例えば今の生活で、どの時間を取り過ぎているか、どの時間が不足しているかと数値化することで、具体的に行動を起こしやすくなります。

具体的な例を見ていきましょう。

地方に単身赴任中のAさんという男性の例。

Aさんは地方に単身赴任しており一人暮らしの男性です。

工場勤務で業務上の会話は少な目、仕事帰りに同僚と飲みに行くこともあるが、会社の愚痴やスポーツの話など、表面的な雑談しかしておらず、最近ではそんなに楽しいと感じていません。

単身赴任当初は頻繁にしていた、家族とのビデオ通話の頻度も減ってきています。

それ以外の時間は、テレビや本を読んで過ごすことが多いです。

Aさんに時間を構造化してもらうと、下記のようになりました。

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・引きこもり 50%

・儀式 5%

・雑談 15%

・活動 20%

・心理ゲーム 5%

・親交 5%

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最近、お子さんの反抗期が始まり、奥さんが精神的に弱ってきているという連絡があり、

家族との時間をもう少し増やしたいと決心し、普段のビデオ通話も時間を決めて定期的に会話をし、月に1度は週末に家族のいる自宅に帰ることにしました。

また、会社の仲間とも、より中身のある交流を楽しみたいと、もともと好きだった釣りを再開し、会社のサークルに参加したところ、気の合う相手が見つかり親交が深まりました。

再度、時間を構造化してもらうと、下記のような変化が見られました。

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・引きこもり 30% (20% 減少)

・儀式 5%

・雑談 20% (5% 増加)

・活動 30% (10% 増加)

・心理ゲーム 5%

・親交 10% (5% 増加)

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まず、一人で過ごす『引きこもり』時間はリラックスになるので十分確保しつつ少しだけ減らし、奥様との会話が増えました。

内容はお子様の反抗期についての会話が多く、同じ目的に向かっての打ち合わせという『活動』の割合が増えたと言えますが、

赴任地での様子を聞いてもらえたり、お互いを気遣い合い励まし合うような『親密な』やりとりも増えたと感じています。

お子様とはゲームや漫画の話など、『雑談』的な内容から始まり、少しずつ、学校での悩みや先生への思いなど、『親密な』会話も増えつつあります。

釣り仲間とも、道具や釣りスポットについて等の専門的な内容『活動』だけでなく、お酒を飲みながらの『雑談』や、家庭の悩みなどを打ち明けるような場面『親交』も出てきました。

(※Aさんは実在する人物をモデルにした、架空の人物です。)

具体的に行動を起こすための目安になる。

このように、対人関係における時間の過ごし方を意識し、バランスを取っていくことで、

生活に変化をもたらし、人間関係、そして人生の充実度を高めていくというのが、時間の構造化の目的です。

早く現状を変えたいという方にとって、「具体的な行動を変える」ための目安となるものですが、

焦って急にバランスを大きく変えようとすると失敗してしまいます。

無理をせず、自分の理想に向けて少しずつ変えていくことが重要です。

現代では、『過労』に代表されるような『活動(仕事)』過多、また一人でスマホやゲームばかりしている『引きこもり』過多も多いのではないでしょうか。

ストロークの内容も見てみよう。

例えば職場での人間関係に悩んでいる人は、職場でのストローク交換の密度だけでなく内容に着目してみましょう。

生産性や成果を求めるあまり、日々のストローク交換の中身が『活動(仕事)』ばかりに偏っていると、人との関係というのは深まりません。

また、ストロークの内容が否定的なものだと、人間関係は良くならないでしょう。

ランチを一緒にとったり、仕事以外の雑談時間を増やすなどで『活動』以外の交流も増やすよう心掛けたり、

仕事の進め方を批判し合ったり監視し合っているような否定的なストローク交換ではなく、肯定的なプラスストロークを多く投げかけるよう意識してみると良いでしょう。

今の時間構造を認識した後で、「どのような時間を増やせば人生がより充実するかな」と考えてみると、そのための行動が見えてくるはずです。

最後に。

他人と交流するというのは、常に批判や否定の可能性にさらされていて、落胆したり傷ついたりすることに繋がります。

一人で過ごすということはそういったリスクや煩わしさもなく、気楽だという側面はあるでしょう。

でも、やはり私たち人間は根本的には他者との交流、そしてより深い部分でつながりたい、分かり合いたいという欲求を持っています。

そういった当たり前の欲求が自分の中にもあるということを、素直に認めていいのです。

形式的な挨拶や表面的な雑談は、効率化ばかり追い求める現代では「無駄な時間」と思えるかもしれません。

でも、そうした交流をスキップして、他者と信頼し合い尊重し合うというような、深い親密な関係は築けないのです。

「私はOK、あなたもOK」という基本哲学に沿ったコミュニケーションを心掛け、

その状態での他者との親密な時間をより多く過ごせるように、「今ここからどんな行動が出来るか」という観点で、日々の時間の使い方を考えてみてはいかがでしょうか。

今日も少し複雑で分かりにくい内容だったかもしれませんが、

ここまで読んでくださりありがとうございました。(勉強熱心ですね!)

神田華子でした。