様々な心理療法~交流分析⑥~「ゲーム分析」あなたも気付けば巻き込まれている?
今日は、交流分析7つの要素のうち、「ゲーム分析」について見ていきたいと思います。
これまでの記事をまだご覧になっていない方や内容を復習したい方は、下記リンクからそれぞれのページに飛べますので、是非ご参考ください。
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⑥ゲーム分析 (不快な心理ゲーム)
⑦人生脚本 (人生のシナリオ、価値観)
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あなたはゲームが好きですか?
今日ご紹介する「心理ゲーム」は、楽しい遊びのゲームではありません。
「そんなつもりはなかったのに、いつも相手を怒らせてしまう」と悩んだり
逆に、「この人は一体何を言いたいんだろう」とイライラしてしまったり、
そんなパターンが繰り返されているようであれば、
もしかしたら、気付かないうちに「ゲーム」に巻き込まれていたのかもしれません。
知らず知らずに相手のゲームに乗ってしまうと、最後は必ず不幸な結末を迎えます。
ちょっと怖くなってきましたか?
大丈夫です。
今日の記事を読んで、どういったものが心理ゲームかということが分かれば、相手の仕掛けてくるゲームに気付けます。
ゲーム分析においては、まずは相手のゲームを見抜くことがとても大切です。
もちろん、あなた自身が無意識に行ってしまっているゲームについても、自分でそのゲームに気付くことが大切な第一歩です。
どうしてそんなゲームをやってしまうのか、どうやってそのゲームから抜け出せるのかもご紹介しますので、是非最後まで読み進めてくださいね。
それでは、早速見ていきましょう!
ゲームとは?
交流分析の生みの親であるエリックバーン氏は、
こじれた人間関係やパターン化された対人トラブルにつながる、自滅的なコミュニケーションのことを「ゲーム」と呼びました。
相手を思い通りに操作しようとして本心を隠して行う、歪んだコミュニケーションです。
交流分析では自分の本音を裏に隠してコミュニケーションすることを「裏面交流」と言い、
裏面交流は素直な交流ではないため、スムーズなコミュニケーションにはならない、とされています。
ゲームを仕掛ける人は、相手を自分の思い通りにコントロールしようとしたり、利用しようとしてこのゲームを始めます。
でも、無意識に行ってしまっているので、本人も苦しんでいるケースが多いです。
そして、仕掛けられている方も不快な気持ちで終わってしまうため
ゲームを仕掛けている、または仕掛けられている、と気付いたら、すぐにゲームから抜け出すことが重要となります。
ゲーム分析は、このように無意識に行われている心理ゲームに気付き、分析することで、他のコミュニケーション方法に切り替えることを目的としています。
また、相手のゲームに気付くだけでも、相手の心理が分かり気持ちが楽になったりしますので、
まずは、今日の学びをきっかけに、自分や相手のゲームに少しでも気付けるようになることを目標にしましょう。
ゲームはどうして行われるの?
人間にはストローク交換が必要不可欠と言われています。
私たちは肯定的なストロークを一番に求めていますが、それが得られないと否定的なストロークでも良いので欲してしまうと言われています。
熟年夫婦で、会話はほとんどないものの嫌味ばかり言い合っているというようなご夫婦がいらっしゃいますが、
それほど、私たちは誰かと一緒にいるとストロークを交換せずにはいられないんですね。
ゲームを行ってしまう心理も、このストローク不足からだと言われています。
特に幼少期に必要なストロークをもらえなかった場合や、過去のトラウマや歪んだ自己認知により、肯定的なストロークを得られない、または感じにくくなっていると、
素直でまっすぐなストローク交換が出来ず、ゲームという形でストローク不足を満たしてしまいます。
ゲームは密なストロークが手に入るものの、否定的なストロークしか得られず結末は必ず不快な感情で終わるものですので、
満足感を得られず何度も繰り返してしまいます。
また、自分なりの信念や価値観を反復して強化したい場合にも行われると言われています。
色々なゲームパターン。
エリックバーン氏は、著書「Games People Play(邦訳「人生ゲーム入門」)」の中で、
日ごろから私たち人間が陥りやすいゲームを30種類以上も紹介しました。
色々と小難しい話もあるんですが、今日はゲームがどのようなものか知っていただくためという目的ですので、
その中から分かりやすいものを5つ紹介します。
(1)はい、でも。 (Yes, But)
相手に対し援助やアドバイスを求めるものの、助言をされると「はい、でも・・・」と、一旦は肯定してもすぐに反対意見を出してくることを繰り返すゲームです。
「この資料なんですが、Aのデータも入れた方がいいですか。」
「確かに、入れた方が分かりやすいね。」
「はい。でも、ちょっと見づらくなりますね。」
「じゃぁこれを消して、こうしたら?」
「はい。でも、この図は残したいんですよね。」
「じゃぁ、少し文字が小さくなるけど、ここに挿入したら?」
「はい。でもやっぱりごちゃごちゃして見えて、嫌なんですよね。」
「じゃあ、もう1ページ追加したら?(イライラ・・・)」
「はい。でも、ページ数はこれ以上増やしたくないんです。」
「じゃあもう、好きにしてくれ!」
「・・・・(何で怒らせちゃったんだろう・・・?)」
このゲームを仕掛けられた相手は、自分の無力感を感じイライラしたり、時間を無駄にしてしまった気がしてうんざりしてしまいます。
このゲームを仕掛ける側の心理としては、「あなたに私の問題は解決できない」という自己肯定・他者否定の態度を強化したり、
相手の時間を自分に使わせたという支配欲を満たすことができます。
このゲームを仕掛けられている、と気付いた時は、相手に助言をするのをやめ、
「あなたはどうしたいのか?」と、相手の意見や好みを引き出す質問をしてあげると良いとされています。
(2)キック・ミー
相手から嫌われるようなことを自らやってしまう、言葉どおり「私を蹴って!」というゲームです。
わざと人から非難されるようなことや、相手が嫌がることをしつこくしたりして、相手から拒絶されることを求めます。
なぜそんなことを?!と思うかもしれませんが、そうすることで注目を集めたり、「やっぱり自分には価値がない」と、自己否定の態度を強化するために行います。
例えば、彼氏からなかなか連絡がこなくて寂しい女性がゲームを仕掛けています。
「なんでLINE読んだのに返事くれないの?」
「ごめん、今日は仕事が忙しくて。」
「最近、全然連絡くれないよね。私のことなんて、もうどうでも良いんでしょ。」
「だから、仕事が忙しいんだって。てか週末会ったばっかりじゃん。」
「週末会ったら平日は連絡しなくて良いの?他にも女がいるんでしょ。」
「いないって。何言ってんだよ。」
「いなかったらLINEの返事くらいできるでしょ!」
「もういい。お前と話してると疲れるわ。」
「ほら。やっぱり私のこと好きじゃないんじゃない・・・!」
こうして、自分は愛されていない、愛される価値がないという人生態度を強める結果になります。
このゲームを仕掛けられた時には、相手の自己肯定感を満たしてあげたり、冷静なAの自分になって客観的な対応をするのが良いとされています。
(3)値引き (ディスカウント)
「義足」と呼ばれることもあるゲームで、自分のことを低く演じて、相手からの肯定的なストロークを求めるゲームです。
また、自分の弱点や自信の無さを利用して、責任を回避したい時にも使われます。
「今度のプレゼンは君が担当してよ。」
「いやいや、僕なんてまだまだ無理ですよ。」
「大丈夫だよ。この資料だってほとんど君が用意してくれたんだし。」
「資料を作るのと人前で発表するのは別問題ですよ。まだまだ新人ですし。」
「君ならうまくやれるよ!」
「無理ですよ。僕、人前に立つと頭が真っ白になるんです。」
「すぐに慣れるよ。」
「慣れませんよ。小さい頃からずっとこうなんです。」
このように、自分の価値を値引き(ディスカウント)して話すことで、言い訳をして責任逃れをし、自分を守ろうとしています。
このゲームを仕掛けられた時は、「じゃあ何だったら出来るかな?」と、こちらから条件を聞いてあげると良いとされています。
(4)さぁ、とっちめてやるぞ!
相手の些細なミスや欠点に対し、きつい言い方で責め立てるゲームです。
ゲームを仕掛ける側の、「自分の方が立場が上だということをアピールしたい」という心理からゲームが始まります。
例文は要らないと思いますが、相手の粗探しをしたり、揚げ足を取ったりして、ここぞとばかりに非難してきます。
自分に自信がなく、必要以上に相手や周囲にパワーバランスを見せつけてくるための行為ですので、
このゲームを仕掛けられていると感じた場合は、冷静なAの状態で論理的な会話に持ち込みましょう。
また、相手のそのような行為は不安や肯定的なストロークが不足していることから起こりますので、
普段から相手の目を見て微笑んだり、挨拶をしっかりしたり、適度に褒める等して、肯定的なストロークを与えてあげると良いとされています。
(5)世話焼き
相手のお世話をすることで、自分の方が上だということをアピールしようとしたり、相手を自分の思うとおりにコントロールしようとするゲームです。
相手は必要ないと感じているのに過度にお世話を焼いて、「あなたのために」「こんなにしてあげた」と無意識に見返りを求めていたり、
「私がいないとだめなのね」と相手の無力感を誘い自分の価値を高めたくて始めます。
「こんなに良くしてくれてるのに断れないな」と、罪悪感を持っては相手のゲームにハマってしまっています。
感謝の気持ちはきちんと述べつつ、距離を持って付き合うと良いとされています。
ゲームに乗らないために。
ゲーム分析とは、ゲームを仕掛ける方が悪いという、悪いもの探しをするのが目的ではありません。
この後味の悪いコミュニケーションはゲームであるといことを自覚し、脱却し、正常なコミュニケーションに戻していくためのものです。
ゲームには仕掛ける側と仕掛けられる側がいますが、仕掛けられる側も、何かしらのストローク不足を持っているからこそゲームに乗ってしまうことがあります。
仕掛ける側も、だれかれ構わずゲームを仕掛けているのではなく、
無意識に、ゲームに乗ってくれそうなカモを選んでゲームを仕掛けているのです。そう、無意識に、です。
こちらがそのカモにならないような態度を取ることで、自然とゲームから遠ざかることが出来ます。
たとえば、責任感の強い人や、他人に親切にしなければならないという信念を持っている方は、自らの信念の為に相手のゲームに乗ってしまいやすいです。
そういう方は、ゲームに気付いた時には、いつものP(Parent)の自分ではなく、あえてA(Adult)の自分として、
冷静で現実的な対応をするように心がけましょう。
ゲームを仕掛けていることに気付いたら?
ゲームからは何も生み出せません。
仮に一時的な心地よさや満足感を得られたとしても、そんな不快なゲームを続けていると、そのうち相手は離れていってしまいます。
相手を威圧したり、被害者ポジションや悲劇のヒロインを演じて、相手をコントロールしたり、責任から逃れるのは、
気持ち良いかもしれませんし、楽かもしれません。
でも、ゲームを終えた後のあなたは幸せでしょうか。
そんなことを続けて、未来のあなたは幸せでしょうか。
どうしていつもこうなるんだろうと嘆くのではなく、
あなたはあなたのままで、伝えたいことを素直に言葉にして伝え、
もっと真っ直ぐな交流をして、より良い人間関係を作り上げていく努力をしませんか。
といっても、ゲームを行ってしまう心理は幼少期からの環境や親の影響が大きいとされていますし、
自分では自分の仕掛けているゲームに気付きにくいと言われています。
でも、気付けないわけではありません。
気付くのが怖いのかもしれません。
あなたが自分を変えたい、今の生活を変えたい、そう思った時に、まず見つめるのは自分自身です。
自分自身のコミュニケーションの方法を見つめた時に、
不快で不毛なパターンに気付けたら。
自分の本心ではない、相手を試しているような言動をして、相手を怒らせたりお互い気まずくなっていることに気付けたら。
その瞬間が、新しいコミュニケーションパターンへの、大きな大きな第一歩ですよ。
最後に。
今日ご紹介したゲームは、あなたも誰かに仕掛けたことがある、または仕掛けられたことがあるのではないでしょうか。
ゲームの種類はまだまだたくさんありますし、ゲーム分析についてより深い内容については、いつかまた別の機会でも記事にしたいと思いますが、
今日は皆様に、交流分析においての「心理ゲーム」という概念を知っていただきたくて、簡単にご紹介させていただきました。
もし、あなたが毎回同じように不快な気持ちになっているコミュニケーションパターンがあるならば、
それは、あなたが知らないうちによく参加している「ゲーム」なのかもしれません。
あなたの好きなゲームに名前を付け、ゲームが始まったと思ったら一刻も早く脱却するようにしましょう。
最初のうちは、「またやってしまった」と、後味が悪い終わり方をする自分に気付くだけかもしれませんが、
そのうち、ゲームの途中で気付けるようになるはずです。
気付いた瞬間、自我状態をAに切り替えて、本音を隠した裏面的交流を避け、素直でまっすぐなコミュニケーションに戻しましょう。
ゲームをいつも仕掛けてくる嫌な相手と無理して仲良くなる必要はありませんが、
「相手がなぜこのようなゲームを仕掛けてくるのか?」
そういったことが想像できるようになると、少し気持ちも変わってくるのではないでしょうか。
ゲームからは、何も生まれません。
ゲームからは、良好な人間関係は築けません。
ゲームを仕掛ける人を止めることは出来ませんが、ゲームに乗らないことを選ぶことは出来ます。
不毛なゲームに参加して無駄に心を消耗するのは、もうやめましょう。
・・・と、言いつつも、ゲームをしてしまうのも私たち人間です。
少しでも不毛なゲームから抜け出し、建設的なコミュニケーションの機会を増やせるよう、心掛けていきたいですね。
では、本日もここまで読んでくださりありがとうございました。
神田華子でした。