人を助けたい!あなたは大丈夫?メサイアコンプレックスについて
『誰かの役に立ちたい・誰かを助けたい!』
そんな風に思っているあなたは、きっと他者のことを考えられる素敵な人ですね。
しかし、その思いが過剰になり過ぎて余計なお世話をしてしまっていたり、
自分を抑圧し過ぎて他人に尽くし過ぎていたり、
感謝をされないことに憤ったりしていませんか?
もし、少しでも心当たりがある方、または周りにそんな人がいる!という方は、
これからご紹介する『メサイアコンプレックス』について知ることで、
今後の人生が変わるかもしれません。
気になる方は是非、最後まで読んでみてくださいね。
メサイアコンプレックスとは?
メサイアコンプレックスとは、自己評価の一形態とされており、
自分が他人を救うことが使命であると信じる傾向を指します。
他人の問題や苦しみに過度に介入し、自己犠牲を行う傾向があり、
そうすることによって自我を保とうとしていると言われています。
メサイアコンプレックスの由来
メサイアコンプレックスは、クリスチャンの聖書に由来する言葉で、
「メサイア(メシア)」はキリスト(救世主)を指します。
「コンプレックス」は、日本語だと「身長にコンプレックスがある」など、
「劣等感」のような意味合いで使われることが多いですが、
もともとは、フロイトで有名な精神分析における専門用語で、
心理学的用語としての意味合いは、
「無意識下で自我に影響を与えている感情の複合体」というようなものになります。
感情の複合体とは、具体的には衝動・欲求・観念・記憶など、様々な心理的要素が、複雑に絡み合って形成された観念の複合体のことで、
普段は無意識化に抑圧されていて本人は気付いていないものの、
実際の行動に影響力を持つと言われています。
まぁざっくり簡単に、「救世主になりたいという複雑な心理状態」という風に認識いただいて問題ありません。
「コンプレックス」を、日本語のニュアンスで感じる「劣等感」という意味合いで捉えると、少しミスリードになりますね。
このメサイアコンプレックスに陥る人は、自分が他人を救済する使命を負っていると信じ、他人の問題や苦しみに介入しようとする傾向があります。
「私が救わなければ」、という強迫観念にも似たような感覚ですね。
彼らは、自分の能力や努力で他人を救うことができると信じ、
常に他人のために自己犠牲を行おうとします。
メサイアコンプレックスのメリットとデメリット
人は、メリットがある行為に対しては、どれだけデメリットが大きくてもやめられないことがあります。
メサイアコンプレックスに陥っている方が享受しているメリットとは何でしょう。
それは、他人を支援することで得られる喜びや満足感です。
また、自己犠牲的な行動によって、他人に対する愛や思いやりを表現することができ、
そんな自分に価値を見出すことができます。
一方で、メサイアコンプレックスに陥っている人は、
実は自尊心や自己肯定感が低く、
他者の役に立てない自分に価値はない、
他人を救えない自分では意味がないと、
ありのままの自分を受け入れられない、ということでもあります。
また、こんな自分は幸せでなくてはならない、
と、自分の生きづらさや不幸せに気付けない人も多いのが特徴です。
また、過度な介入や助けを求められない場面での干渉は、
他人にとって迷惑やストレスとなる可能性があり、
十分に感謝をされなかったり必要とされなくなると、過度に反応してしまう人もいます。
その結果、人間関係がこじれたり、うまくいかなくなるケースも多いのです。
また、自己犠牲的な行動が過度になり、自分の健康や幸福を犠牲にしていることもあります。
メリットをはるかに上回るデメリットがあると思いませんか?
共依存に見られやすいメサイアコンプレックス
メサイアコンプレックスの人は、救世主として相手を助けてあげたいんですが、
助けてあげたいというのが、相手のために相手を助けたいというよりも、
相手を助けることで、自分が助かるというか、
自分が価値のある存在だと思うことができるから、助けたいという感じなんですね。
本人はそのことに気付いていませんが、
自分の存在価値を他者に求めてしまっている状態で、
決して健全な精神状態とは言えないわけです。
そして、そういう人達というのは、
人助けをするとか、人の役に立つような行為を通して
自分という人間としての自信や自尊心を保っているので、
例えば相手を助けて、相手が助かれば、自分は用無しになってしまう
そういう状況が耐えられないんですね。
自分の価値がなくなったように感じてしまうわけです。
相手が本当に助かってしまうと、当然もう救世主はいらないってなっちゃうわけですよ。
それがやっぱりメサイアコンプレックスの人っていうのは、すごく怖いんですね。
怖いので、相手を依存させるようにしてしまう。
そうすると、これが共依存という関係に陥っていくわけなんですね。
共依存の中では相手を依存させる人のことをイネーブラーと呼び、
直訳すると「それを可能にする人」という意味になります。
要は、問題行動を起こしている相手を助けることによって、
相手が却ってこちらに依存してしまう、という悪循環を
もちろん意図してではなく、無意識の中で作っているというような状態です。
そうすることで、自分が必要とされている、
自分に存在価値があると感じることが出来るわけです。
これが共依存の関係になるんですけれども、
例えば、成人を過ぎて引きこもりでギャンブルばかりやっている息子さんの借金を
全部代わりに払ってしまっているお母さんなんかは、
共依存という概念で見ると、イネーブラーになるわけですね。
「私がいないとこの子は生きていけない」と
必死に相手に尽くしてしまうんですね。
そして、相手はますます依存してしまいます。
こういう状態が共依存です。
共依存については、こちらの記事もご参考なさってください。
誰かを助けることで自分に価値があると感じられるタイプの人は
「私が助けなければ」と使命感を感じるメサイアコンプレックスに陥りやすく、
共依存におけるイネイブラーになりやすいんですね。
メサイアコンプレックスの問題点
メサイアコンプレックスの何が悪いのかと言うと、
自分自身が生きづらさを抱えているということなんですが、
そのことに気付いていないというのも問題になります。
既に色々と下記ましたが、具体的にどんなことが問題になるのかをまとめてみます。
(1)過度な負担やストレス
メサイアコンプレックスの持ち主は、他人を救うことに過度に焦点を当ててしまうため
いつも他人を優先し、自分を抑圧してしまう傾向があります。
結果として心身両方の負担が増し、感情や情緒的な問題にも発展することもあります。
他人を救うために、自分自身の健康や幸福に悪影響を及ぼしてしまうほど、
無意識に自己犠牲を重ねてしまうのは、問題ですよね。
(2)自己評価の他者依存
メサイアコンプレックスの持ち主は、自分の自己肯定感や自尊心、そういったものが、
他者の役に立つことでしか感じられていない状態なんですね。
これは、自己評価を他人の救済に依存してしまっていると言えますよね。
ありのままの自分を良しとできないということで、
こういった自己肯定感の低さは、内面的な不安定さに繋がり、
精神的なトラブルにもつながりやすいと言えますので、問題ですよね。
3.人間関係のトラブル
メサイアコンプレックスの持ち主は、
他人の問題に過剰に介入しようとする傾向があります。
要は、過度なおせっかいですね。
これは、上にあげたように共依存にも共通することですが、
他人が自分の問題を自分で解決する機会や能力を奪うことにもつながります。
そして、相手を救うどころか、依存や無力感を助長する可能性があるんです。
また、相手から感謝をされたり必要とされたりと、
そういうことを通して、自分というものを確信できるというか
自分に自信を持てるような精神状態ですので、
例えば、相手が自分の期待するような感謝の気持ちを表さなかったり、
納得のいく形で褒められたり労ってもらえないと、
過剰に反応して怒ってしまったりすることもあります。
また、相手が求めてもいないようなサポートや介助を過剰に施してしまうことによって、
余計なおせっかいになってしまって迷惑がられることもあります。
そういったことなどから、相手のほうも振り回されてしまってストレスが溜まって
最終的に去っていくという
人間関係のトラブルに発展したりもするんです。
過剰な介入で人間関係が壊れてしまうのは、問題ですよね。
結論:解消した方が良い!
以上、3つの具体的な問題点を挙げましたが、
メサイアコンプレックスが、良好な人間関係や健全な自己成長に
マイナスの影響を与えるものであるということは、
理解していただけたのではないでしょうか。
メサイアコンプレックスに陥るには根深い理由があるのですが、
解消していった方が生きやすくなることは間違いないと思います。
カウンセリングの仕事とメサイアコンプレックス
私自身もカウンセラーとして対人支援職をやっていますし、
これまでも、対人サポート要素の強い仕事をしてきていますので、
誰かの役に立てて嬉しいとか、人の役に立ちたいとか、
感謝されて嬉しいとか、褒められて嬉しいとか、そういう気持ちは当然あります。
こういった気持ちは、ある程度であれば、誰にでもある健全な感情だと思います。
プラスのストロークを投げられると、人間は嬉しいですものね。
しかし、カウンセラーや福祉職などの対人支援職や、医療機関に従事されている方などは、
人に対して尽くしたい、自分を犠牲にしてでも誰かの役に立ちたい、といった気持ち、
メサイアコンプレックスの傾向が強いというのは事実だと思います。
実際に、そのような現場で、自分を犠牲にして身を粉にして人のために働く人、
というのは、少なくありませんよね。
しかし、上記にあげたように、メサイアコンプレックスというのは、
当人にとっても周りにとっても大きな問題となりうるのです。
対人支援職をされている方がメサイアコンプレックスに陥っていると、
かなり危険な状態であると、私は思います。
次回につづく・・・
ということで、次回はメサイアコンプレックスを解消するためにどうすればよいかと
周りにそんな人がいる場合の対処法について、まとめていきたいと思います。
自分でも気付いていなかった自分自身の心理状態に気付くことで
今よりももっと自由でもっと気楽でもっと自分らしい、幸せな人生に繋がると思いますので、
是非次の記事もご覧になってくださいね。
でも、いつも言っている通り、偶然このページにたどり着き、
ここまで読んでくださっただけでも
大きな意味、そして価値があることだと思います。
変化はいつも、「気付くこと」が最初の、そして大きな第一歩だからです!
このページにたどり着いたのは偶然かもしれませんが、
ここまで読んでくださったのは、まぎれもなくあなたの意思です。
偶然を運命と呼びたくなるような変化が、これから起こるかもしれません。^^
最後まで読んでくださりありがとうございました。
神田華子でした。