我慢の先にあるもの?それとも本当は今ここにあるもの?
とあるご夫婦のお話です。
寡黙で責任感が強く、週末も少年野球のコーチで忙しくされていた行動派のお父さんと、
甘えん坊だけどしっかり者で、毎日工夫を凝らして家族の健康を守っていたお母さん。
お子さんたちは物心ついた頃からご両親の不仲にうっすらと気付いており、
仮面夫婦とも言えないほど、
会話もなく、一緒に過ごす時間もないご両親の状態が、
お友達のお家とは少し違うかも?と気付き始めた頃から、
不安定な青春時代を過ごしていました。
「あなた達が大切だから、お母さんは頑張ってるのよ」
「あなた達のために毎日我慢しているわ」
このような、本来は愛情から来ているはずの言葉が、
まだ幼かった彼らの言葉には、
何度も何度も鋭く心に刺さったことでしょう。
「自分達が居なければ、お母さんはもっと幸せだったの?」
愛するお子様たちがそんな風に、
大好きなお母さんのために自分の存在を否定をしてしまうことほど、つらいことはないですよね。
転換期に急変化した関係性
そんなご夫婦ですが、子供たちが独立したあとも、
食事を一緒にすることもないほど冷めきった関係のまま、
それでも離婚はすることなく、
淡々とした共同生活を続けていたそうです。
しかしそんなある日、奥様が体調を崩し、
歩くことも、大好きだった料理をすることすらも、
ままならなくなってしまいました。
すると、責任感の強く頼られるのが好きだった旦那様は、
奥様のために毎日食事を作り、
これまでやってこなかった家事を全てこなし、
更には、1人で食事をとるのが寂しいとぼやく奥様と、
一緒に食事をとるように仕事を調整したそうです。
これまで何年も何十年も会話のなかったご夫婦の間に会話が生まれ、
信頼関係が徐々に再構築されたのです。
本当はいつもそこにあったもの?
誰か一人を一生のパートナーとして選び、
人生を共にすると心に決めてから、
結婚生活というのは長い間、続いていくものです。
子供が生まれ、意見の食い違いで衝突したり夫婦の危機を迎えたりしながら、
「我慢」という2文字だけを胸に過ごした日々もあるかもしれません。
でも、このご夫婦にとっては、
その我慢の先にあったのは、
何十年もの時を経て取り戻せた、なんとも温かい2人だけの夫婦生活でした。
奥様の体調不良がキッカケとはなりましたが、
私は、本当は、愛はいつもそこにあったのでは無いかなと思います。
でも、毎日の慌ただしい生活や自分のことに忙しく、
お互いに相手を思いやる余裕を無くし、
相手がその時その時で必要としていることや、
本当に求めていることを察することも出来ず、
察しても照れくさくて行動することが出来ず、
また、逆にそれをきちんと言葉にして表現することも、
愛情表現を素直に求めることも恥ずかしくて出来ない。
こうしてくれたらいいのにと、
勝手に期待をして、
勝手にガッカリして、
相手への愛情度までも下がってしまう。
そんな不機嫌が相手にも伝わり、不機嫌が伝染してしまう。
そんな風に、小さな小さなすれ違いや失望感を繰り返していくうちに、
自分の中に確かにあった愛情や、
相手への思いやりという温かい気持ちが
見えなくなっていたのではいかなと思います。
体調が悪くなくても、最初から素直に寂しいと甘えられていたら。
体調が悪くなくても、もっと家のことを気にかけて一緒に過ごす時間を大切にしてくれたら。
もしかしたら、お二人の関係というのは、
もっと早い段階から、
温かさを取り戻せたのかなと思います。
でも、誰かを愛したり愛されること、
そしてそれを実感することに、遅過ぎるということはありません。
時にはその相手がこの世にいなくなった後でさえ、
その人が残してくれた愛情、これまで気付かなかった愛情を感じられる度に
私たちの心は愛で満たされて、温かい気持ちになれるんです。
自分が求めているものを知る勇気、伝える勇気
嫌な環境を我慢しないでというのは、
嫌なことがあったらすぐにそこから飛び出せという意味ではありません。
自分がなんとなく嫌だと感じているモヤモヤ・イライラした気持ちの正体はなんなのか
その原因は何なのか。
自分が本当に求めているのは何なのか。
本当に相手はそれを満たすことが出来ないのか。
本当に今、まったく満たしてくれていないのか。
逆に、自分は十分に相手を満たしてあげられているか。
自分のことで精一杯で、
相手の発するSOS を見落としていないか。
まずは、そういった一つ一つをしっかりと
自分で見つめ直すことが重要なんですね。
そうではないと、感情的になったまま目を背けて離れてしまうと、
本当に大切なものを見落としてしまったり、失ったりしてしまいます。
あなたは実は足りていないのではなく、
気付いていないだけかもしれません。
あなたの身近な人の心をまずは温かく、
優しくしてあげることが出来れば、
あなたの心もどんどん温かくなっていくはずですよ。
何年もかかって変わっていくこともある。
もちろん、それでも変わらないものもあります。
それはあなたのせいではなく、そういうものといことです。
決して自分を責めないで。
あなたの勇気と優しさが連鎖して、
あなたの世界が変わっていくことを、
信じながら、祈りながら、
この記事を書きました。
負の連鎖を作らないで
一つだけ、今日のお話からお願いしたいことがあります。
もし、あなたにお子様がいらっしゃるのであれば、
お子様に対して、パートナーの悪口を言うのだけはやめましょう。
もしかしたら、あなた自身が同じようなことを、
あなたのお母様やお父様からされたという経験があるかもしれません。
でも、それは、ここで断ち切りましょう。
断ち切れます。
あなたが深く傷付いたように、
その行為はあなたのお子様の心を深く傷付けてしまいます。
あなたがパートナーに対しどんなことを感じていても、
お子さんにとっては、大好きなお父さんとお母さんです。
本能的に、生理的に、自分のご両親というのは特別な存在なのです。
自分にはご両親からのDNAが流れている訳ですから。
そんなお子さんにとって大好きなお母さんが、
大好きなお父さんのせいで傷付いている、
お母さんの味方をしないといけないのかな、と思うこと自体、
小さな心に、大きな傷を付けてしまいます。
そして、苦しんでいるお母さんを見て、
大好きなはずのお父さんを一緒に憎んだり、
自分さえいなければと思ってしまう、
とっても健気な存在なんです。
いつも近くにいて自分の味方をしてくれる、手っ取り早い存在として、
お子様の存在を利用して自分のストレスを発散させたり
お子様への愛情表現のつもりで、
「あなたのために辛いけど頑張る」
=「あなたがいなければ私はもっと幸せになれる」
というようなメッセージをうっかり送ってしまわないように、気を付けましょう。
愚痴を吐き出す必要がある日もあるでしょう。
でもそれは、ご友人等、大人同士で吐き出してください。
そして、ご自身が無理をしすぎないようにということも、意識してくださいね。
誰かを幸せにできるのは、まずは自分が幸せになってからです。
あなたが笑顔でいてくれれば、お子様も笑顔でいられます。
最後に。
今ここにある幸せや温かさに気付ければ
何年も我慢することなく、今すぐ幸せを感じることが出来ます。
幸せというのは我慢の先にあるものではなく
ご褒美のようにあなたを待っているものでもありません。
今ここで感じるもの。
今日が楽しい。
今日が嬉しい。
今日が、今この瞬間が幸せ。
そんな風に思える時間を少しづつ蓄積させていくことで、
結果として、幸せな人生だったと思える生き方になっていくんだと思います。
今ある幸せに気付いて感謝し、
行動に移しましょう。
我慢の先に待っている幸せの保障はありませんからね。
愛は気付けばそこにあるもの。
でも、気付かずに踏み潰している可能性もあることを知って、
しっかりと自分の周りの幸せを探して見つけてくださいね。
見つかったら言葉に出してつぶやいてみてください。
「あ~嬉しいな~」
「あ~幸せだな~」
そうして言葉にすることで、あなたの周りの人も幸せな気持ちにすることが、きっと出来ますよ。
今日も読んでくださりありがとうございます。
神田華子でした。