人から褒められるのが辛くて苦手?その心理を解説します。
人から褒められるということは、本来は嬉しいはずのことですが、
それを嫌だと感じる方もいます。
どうしてなのでしょうか?
今日は褒めれるのが苦手な方の心理と、そう感じてしまう時に意識して欲しいことについて、解説してみたいと思います。
褒められた時に素直に喜べず、なんだか心にズッシリとモヤモヤしたものを感じたことのある方は、
ぜひ、最後まで読んでみて、自分の気持ちの正体を探るヒントにしてくださいね。
それでは早速、勉強していきましょう!
自分の存在価値を条件付きに感じてしまう
まず、褒められる状況というのはほとんどの場合、
自分が何か良い行為をした場合や、
周囲の役に立つような成果を出した時が多いと思います。
そういった場合、
「その行為がなければ自分の存在価値が下がってしまう」のではないかと、
褒められれば褒められるほど、逆に不安になってしまうことがあるのです。
つまり、何か良いことをしなければ、誰かの役に立たなければ、自分には価値がない、
と、自分の存在価値が、まるで条件付きであるように感じてしまうのです。
または、例えば容姿を褒められた時には、そのことを純粋に喜ぶ気持ちの裏に、
「体型を崩したら自分の価値が下がってしまう」
「歳をとったら自分の価値が下がってしまう」
というような、現状を維持できないかもしれない将来への不安が出てきてしまうものです。
これが、褒められた時に感じるズッシリとしたモヤモヤの正体です。
期待されるプレッシャーが苦痛
褒められるということは期待のあらわれでもあります。
期待されるということは、自分の持っている能力やこれまでの努力が認められたということでもあり、
有難いことでもあり、喜ばしいことでもありますが、
同時に、期待に応えなければならないというプレッシャーが生まれます。
仕事で成果を出して評価をされると、当然期待がかかります。
「次も結果を出さなければ」というプレッシャーを過度に感じてしまうと、
それが大きなストレスになってしまうのです。
現代の競争社会で生きていく限り、
ある程度は仕方の無いことではあるのですが、
褒められるということは、何かを期待されている、将来も継続した成果を見込まれていることとイコールになりやすいため、
プレッシャーを感じて、苦痛となることがあるのです。
失望されるのが怖い
では、プレッシャーが過度なストレスになるのは、どんな時でしょうか。
それは、「失望されるのを恐れている時」です。
「期待に応えられずにガッカリさせてしまうのが怖い」
「自分が本当はダメなやつだと思われるのが怖い」
このような感情が強い時ですね。
その裏には、
「嫌われたくない」
「評価の高い自分でいたい」
という思いも、隠れているかもしれません。
何かを恐れるという感情は、人間にとって本能レベルの必要な感情ですが、
過度な不安や恐れと言うのは、私たちにとって、とてつもないストレスになるものです。
褒められると、無意識レベルで相手の期待を感じ、同時に失望されることを恐れてしまうため、
その恐れや不安が原因で、ストレスを感じてしまうという結果になるのです。
目立つのが嫌
集団の中で目立ってしまって注目を集めたり、周囲からの嫉妬を恐れるがために、
褒められるのを嫌がる人もいます。
こんなに個人で色んなことができる時代にも関わらず、
または、個の時代であるが故に、
匿名性の高い集団の中にいる方が気が楽なのです。
褒められるのは嬉しいけど目立ちたくない、多数の中の1人として埋もれていたいというのは
出る杭は打たれる、という日本特有の文化から来ているものかもしれませんね。
褒められて嫌な気持ちになった時に考えて欲しいこと。
さて、上記の理由に心当たりがあるという方は、どうやって気持ちを切り替えれば良いかも知りたいですよね。
そんな時には、下記の考え方を思い出してみてください。
①セルフイメージと他者イメージが一致しないのはよくあること
セルフイメージとは自分に対するイメージや価値の感じ方のことで、
他者イメージとは、他人があなたに対して抱いているイメージのことで、
「あなたに対する総合的な評価」と、言い換えることもできるかもしれません。
この2つにギャップがあるように感じると、不安や窮屈さを感じ、プレッシャーやストレスとなります。
でも、実際にセルフイメージと他者イメージが一致していない状況というのはよく起こることです。
あなた以外の他人はあなたの心の中や、
どれだけ苦労しどれだけ努力し今の成果に繋がっているかなども、
100%知ることは不可能ですから、
分からない部分はどうしても自分の中で想像で補っています。
これは、そんなつもりはなくても、どんなに自分は相手のありのままの姿を見ていると思っていても、
実際には自分の想像・妄想を含めて相手のイメージを作り出しているのです。
なので、セルフイメージと他者イメージが一致しないということは、しごく当然なことであって、
そこまで極端に避けることでも、改善しようとする必要があるものでもないんですね。
しかし、そのセルフイメージのギャップで苦しんでいるのであれば、
少し自分の捉え方を改めて考えてみる時間を。ゆっくりと取っていただいた方がいいかもしれません。
詳しくは下記の記事でも紹介していますので、是非ご参考ください。
【参考記事】 → ついつい自分をよく見せてしまうあなたへ。セルフイメージと他者イメージのギャップへの考え方。
すごい人だと思われることは、大変なことです。
すごい人のように振る舞わないといけないからです。
等身大の自分以上の自分を見せようとしていませんか?
もしそんな気持ちが少しでもあるのなら、それはなぜなのか、考えてみましょう。
相手にどう思われているかを、気にしすぎてはいないでしょうか?
※ゲームに注意!
自分を等身大より大きく見せてはいけないと書きましたが、
反対に、自分を等身大より小さく見せるために、自分を卑下したり、過度に謙遜しすぎる癖のある方は、
気付かないうちに「ゲーム」をしてしまっているかもしれません。
ゲームとは、交流分析の回でご紹介した心理ゲームのことです。
【参考記事】→ 様々な心理療法~交流分析⑥~「ゲーム分析」あなたも気付けば巻き込まれている?
交流分析の中では、人が無意識に繰り返し行ってしまい、
相手も自分も不快に終わる、不毛なコミュニケーションパターンのことを『ゲーム』と呼んでおり、
自分を卑下したり、あえて自分の価値を落とすような発言をするゲームは、
『ディスカウント(値引き)』と呼ばれています。
これは、「そんなことないよ」と自分を認めてもらえたり、構ってもらえるという、
承認欲求や愛情確認の手段として使われることもあれば、
責任回避や失敗の弁明をしたいという気持ちから行ってしまうこともあります。
どのような目的にせよ、ゲームは対人関係の中で自分を守るために無意識に仕掛けてしまっているもので、
いわばこれまでの人生や人間関係を通して身に付けた処世術なのです。
例えば、誰かに褒められた時に、素直に喜びや感謝の気持ちを伝えるのではなく
過度に相手の評価を否定して、以下のような会話になっていたら要注意です。
「そんなことないんです、私なんて〇〇ですし」
「いやいや、だってこの前も△△をあんなに頑張って取り組んでたし」
「全然そんなことないです。これも出来ないしあれも出来ないし・・・」
「そんなことないよ、XXも出来るんだし」
「違うんです。私なんか、本当に役立たずで・・・」
「そっか・・・・・。」
こんな風に、相手からのポジティブなコメントに対して、
相手の評価を否定し、自分を徹底的に下げた発言をした結果、
相手も自分も、なんだか不快な気分で、モヤモヤしたり、
イライラしたままコミュニケーションが終わっているのであれば、
気付かないうちにゲームを仕掛けてしまっている可能性もあるので注意しましょう。
②他者との境界線を意識する
他者イメージや、相手にどう思われているか気にしすぎてしまう。
嫌われたくない、評価を下げたくないと過度に恐れてしまう。
これらの気持ちはすべて、他人との境界線の薄さが影響しています。
他人がどう思うか、どう評価するか、何を感じるかというのは、
私たちには知ることも出来なければ、コントロールはできません。
自分がどんなに努力してもどうにもできない、コントロールできないことに気を揉むのは、とっても苦しいことです。
相手に気に入られようと頑張ったり、評価をしてもらおうと無理をしたり、嫌われないように無理に相手に合わせたりしても、
必ずしも報われるとは限らず、報われているかの答え合わせも出来ないからです。
自分にはどうにもできないことを、どうにもできないものとして受け入れ、手放す勇気が大切です。
アメリカの神学者 ラインホールド・二ーバーも、こんな有名な祈りの言葉を残しています。
おお神よ。
ニーバーの祈り
変えられるものを変える勇気を。
変えられないものを受け入れる冷静さを。
そして、両者を識別する知恵を与えたまえ。
先人の名言というのは、本当に不変の真理をついていますよね。
それほど人間とは、時代や国籍を問わず、みんな同じように悩み苦しみ、必死に生き続けているものなのでしょう。
③根底にある自分の気持ちに注目する
褒められて嫌な気持ちがするときに、根底にある気持ちをゆっくり掘り下げてみましょう。
もしかすると、自分のエゴが隠れているかもしれません。
エゴとは、簡単に言うと、利己主義、自分中心な考えのことです。
「自分に注目しないでください。なぜなら失望されたくないから。」
失望されたくないという気持ちは、すなわち相手に嫌われたくない、評価を下げたくないということです。
「勝手に褒めて、期待してイメージを膨らませ、イメージが変われば失望する。」
これはすべて相手が勝手にやっていることで、あなたも他人に対して多かれ少なかれ、意識的にせよ無意識にせよ、同じように感じているはずです。
なのに、それを想像したり実際に感じたりするのが、とても苦痛なのだとしたらやはり、
「自分をよく見せたい」
「好かれ続けるために、相手を喜ばせたい」
「嫌われないために最初から注目されたくない」
という気持ちが強いのかもしれません。
そんな時には、先ほどお話ししたセルフイメージと他者イメージとのギャップの話、他者との境界線について思い出しましょう。
自分という人間は世界に1人だけなので、
自分が思っている自分と、他人が思っている自分は、違っていることは、ごく自然なのです。
他人の感情は他人のもの、他人の評価は他人のもの。
自分には影響を与えられないものに影響を与えようと努力することは、
不毛であり苦痛であるということをしっかりと思い出し、
他者との境界線をハッキリ意識しましょう。
そして、どれだけ考えても絶対に見ることの出来ない他人の心の中を考えるのではなく、
自分自身の心の中をしっかりと見つめ、
自分が何をしたいか、どうしたいか、そのために何ができるのかを、考えましょう。
④自己肯定感の低さを受け入れる
そうして自分の気持ちを掘り下げていったときに見つかる不安な気持ちは、
自己肯定感が低いことが原因として考えられます。
自己肯定感とは、「ありのままの自分」を受け入れて肯定できるという感覚です。
自己肯定感の低さとは、セルフイメージの低さとも関連しますが、
自己肯定感が低いと、
「自分にはそんな価値は無い。本当の自分をさらけ出すと相手は離れていくに決まっている」
という思いが心の中に潜んでいるため、
褒められることに違和感を感じて、嫌な気持ちになってしまいます。
具体的な対象について根拠の無い自信を持つ必要はありませんが
「自分は自分のままでいい」という根拠の無い自信というか安心感を自分で感じられることは、
生きやすさを高めるために非常に重要です。
自分の価値は自分で決める
世の中のすべてのものに対して、価値を決めているのは人間です。
例えばどこかの王族の赤ちゃんが、その土地でどんなに有り難がられ大切にされたとしても、
その価値を認識していない人しかいない違う土地に放り出されれば、
ただの丸裸の赤ちゃんです。
戦時に崇拝された英雄も、戦争が終われば荒くれ者として処刑されることもあるのです。
他人から与えられる価値というのは、それほどうつろいやすく頼りにならないものなのです。
私たちは、生まれながらに社会的に不平等かもしれません。
幼少期からの養育環境、親からの愛情の注がれ方、これまでそして今を取り巻く人間関係により、
自分に自信が持てず、自分の価値を肯定できないという方もいるかもしれません。
でも、本当はあなたの価値を決めているのは、他人ではなく、あなた自身なのです。
あなたとして生まれてきて、あなたとして生きていくのですから、
あなたはあなたのままでしかいられないし、
どんなあなたでも、それでいいんです。
自己肯定感は上がったり下がったりする
また、自己肯定感というのは常に高いわけでは無く、
失敗したり壁にぶち当たれば簡単に崩れ落ちるものです。
でも、そこからまた作り上げられるものでもあるのです。
今の自分は自己肯定感が下がっているなと感じたら、
その気持ちをダメなものだと思わずに、受け入れてみましょう。
そうして受け入れることで、
そんな自分をスタート地点にして、今の自分には何が出来るのかと、
また何か行動を起こすための、前向きな力が湧いてくるはずです。
自己肯定感が低い自分を認め、受け入れると、
その時点で自己肯定感は上がっているという、
なんとも不思議な現象ですね。
自己肯定感については、下記の記事でも書いていますのでご参考ください。
【参考記事】 → 自己肯定感とは?自己肯定感を高めるたった1つの方法をご紹介します!
最後に。
褒められているはずなのに気が重い、
それって何だかもったいないですよね。
褒められた部分は、自分にとっての長所なんだと認めて受け入れて、
素直に喜べるようになるといいですよね。
確かに、裏の意図があって戦略的に褒めてくる人もいれば、お世辞で褒めてくる人もいます。
でも、いちいち相手の真意を探っていてはきりがないんですね。
相手の真意がどうかというのは、実は関係ないんです。
今日褒められたから嬉しい、これからも頑張ろう。
明日はもう褒められないかもしれない、でもそれでもいいじゃないですか。
今日褒められたということはあなたの人生にとって変わらない事実であり、
まだ来てもいない明日や未来の心配をしたってしょうがないんです。
他人は勝手に褒めて勝手に期待し、勝手にがっかりするかもしれませんが、
他人なんて、どうせ無責任なものですから、がっかりさせてもいいんです。
相手の行動も気持ちも評価も変えられません。
自分で自分の人生をどう生きていきたいか、
自分で自分をどう評価し、どう感じるか。
一番大事なのはそれだけです。
褒められた時に素直に喜べずに不安になるとき、
あなたは相手や周りの評価を気にして、
自分の人生が他人軸になっている可能性があります。
そんな日も、あると思います。
でも、そんな自分に気付いた時にはすぐに、今日お伝えしたことを思い出して、
しっかりと自分軸を取り戻してくださいね。
それを意識するだけでも、あなたの心はちょっとだけ、軽くなっているはずですよ。
今日も、ここまで読んでくださりありがとうございました。
神田華子でした。