様々な心理療法~交流分析④~「対話分析」あなたと相手の状態は?

今日は、交流分析7つの要素のうち、「対話分析」について見ていきたいと思います。

これまでの記事をまだご覧になっていない方や内容を復習したい方は、下記リンクからそれぞれのページに飛べますので、是非ご参考ください。

①自我状態 (自分の中の傾向、心の成り立ち、エゴグラム)

②人生態度 (人生の基本的立場)

③ストローク (相手の存在を認めるすべての言動、ふれあい)

④対話分析 (コミュニケーション)

⑤時間の構造化 (時間の過ごし方)

⑥ゲーム分析 (不快な心理ゲーム)

⑦人生脚本 (人生のシナリオ、価値観)

この対話分析の概念を学ぶことで、家庭や職場での日々の対話で、なんだかいつもモヤモヤしたりイライラしたり、変な喧嘩になってしまう、

という状態がなぜ起こるのか、という問いに対しての、ヒントになるかもしれません。

それでは早速学んでいきましょう。

対話分析=コミュニケーションパターンの分析!

対話分析では、人間関係のトラブルやストレスを抱えている方が、どのようなコミュニケーションパターンで相手と交流しているかを分析し、改善を促していくことを目的としています。

先日の①自我状態」の記事で、人は自分の中にP・A・Cという異なる自我状態があるとお伝えしました。

ルールや信念を重んじる、批判的で指導的立場や優しく面倒見の良いP (親)、現実主義で冷静なA (大人)、そして、自由または従順なC (子供) のことですね。

対話分析では、自分のP・A・Cのどの状態から、相手のP・A・Cのどの状態に向かってストロークを投げかけてるのかを見ていきます。

ストロークの交換方法には、大きく分けて3つあります。

(1)相補的交流 (スムーズな交流)

(2)交叉的交流 (クロスしていてちぐはぐな交流)

(3)裏面的交流 (裏に本心が隠された交流)

1つずつ、詳しく見ていきましょう。

(1)相補的交流 とは?

あなたが相手に投げかけているストロークの方向と、相手がこちらに投げかけているストロークの方向が平行な状態のコミュニケーションです。

相手と自分の自我状態が一致している、または、親と子、上司と部下、師匠と弟子のように、一般的な関係性とストロークの方向性がかみ合っている場合に成立します。

このパターンであれば、コミュニケーションは比較的うまくいきやすいとされています。

例えば、仕事でスムーズにいっている時には冷静で合理的なA同士でやり取りをしていることが多いでしょうし、

仲の良い友達同士や恋人といる時には、お互いに素直なCの状態でコミュニケーションを取っているかもしれません。

また、親からの指示的内容に子供が心から従順に従っていれば、コミュニケーションは問題にはならないでしょう。

P-Pの例:

「あいつはまた遅刻か。最近の若者はけしからんのう。」 (P→P)

「まったくです。大体、遅刻の連絡はLINEじゃなくて電話でするべきですよね。」 (P→P)

A-Aの例:

「この資料、ここの金額が間違っているようですが。」 (A→A)

「そうですか。これは私が作った資料ではないので、〇〇さんに聞いてください。」 (A→A)

C-Cの例:

「〇〇ちゃ~ん、あの映画見た?めっちゃ良かったよ!」 (C→C)

「見た見た!感動したよね~!主役の俳優さんめっちゃカッコよくなかった?」 (C→C)

というような具合です。

また、お互いが違う自我状態であっても、ストロークの方向性が平行になっている場合は、コミュニケーションは比較的スムーズだとされています。

P-Cの例:

「ご飯食べ終わったらお皿片づけてね。」 (P→C)

「はーい。」 (C→P)

(2)交叉的交換 (クロスしていてちぐはぐな交流)

これは、あなたが相手に向けている自我状態と、相手があなたに向けている自我状態が一致していない状態で、

お互いの自我状態が交差(クロス)しているコミュニケーションパターンです。

自分の期待したような反応が返ってこないので、コミュニケーションのトラブルやストレスに繋がりやすいコミュニケーションとなります。

例えば、あなたがCからCに投げかけたつもりで、

「暑いからアイス食べない?」 と言った時に、相手からも

「良いね!食べよ食べよ!」と、Cからの反応があれば、C⇔Cの相補的交流となり会話はスムーズに進みますが、

「身体が冷えるし太るから、やめた方がいいんじゃない?」 と、相手がPとして反応してきた場合、

コミュニケーションパターンがクロスしているので、イラっとしたり不満が残ったりと、ネガティブな感情になりがちです。

交叉的交流の具体例。

他にも、例えばあなたが出発の準備に急いでいて時間を知りたいときに、

旦那さんに「今、何時かな?まだ時間あるかな?」 (A→A) と聞いたとします。

相手から、「9時45分だよ。出発まであと15分あるよ。」 (A→A)とかえってくればスムーズですが、

「今?何時でしょう~?おやじ~!」(C→C) とか、

「そんなに慌てるなら、もっと早く準備始めたらよかったんじゃない?」 (P→C)と言われると、

イラっとしたりして、喧嘩に発展するのではないでしょうか。

(3)裏面的交流 (裏に本心が隠された交流)

これは、表面上のストロークとは別の本心が隠されている場合の交流パターンです。

いわゆる、「本音と建前が違う」というケースですね。

これは比較的分かりやすいと思いますが、例を出しておきしょう。

「遅刻の連絡は、LINEじゃなくて電話でするべきだよね。」

「そうですよね、それが礼儀ですよね。 (心のどんな手段でも、連絡事項が伝わればいいんじゃないの?)」 

このように、私たちは往々にして、意図はどうであれ本音を言わずに交流するというコミュニケーションを取ってしまうことがあります。

メッセージの発信地と到着地を意識しよう。

相手からのストロークが、相手のどの自我状態から、自分のどの自我状態に向けて投げられているかを考えてみましょう。

相手があなたに対し、指導的な立場でPからCへのメッセージを送ったときに、

あなたが相手の予想通り、Cとしての立場で、「はい、分かりました。」と素直に従った場合、トラブルは起こりません。

しかしここで、あなたがAの立場から論理的な意見や反論を述べるとすると、

相手にとっては予想していなかった反応ですので、

「なんだその態度は!つべこべ言わずに、言われたことをやりなさい!」と、怒らせてしまうことになるかもしれません。

そうすると、せっかくAからAへのストロークを送ったあなたの気持ちは踏みにじられたように感じ、言い争いになったり、不満が残ったりすることでしょう。

でも、あえてAの立場で返すことによって、相手もAからの発信に切り替えてくれ、コミュニケーションがスムーズに進むこともあります。

このように、コミュニケーションの交叉によってトラブルが起きている場合、どちらかが、自我状態を相手に合わせる必要があるのです。

自分のどの自我状態を発信地にして、相手のどの自我状態に向けてストロークを投げるのかを検討して、クロスしないよう意識すれば、コミュ二ケーションはスムーズに進みます。

相手から予想外の反応が返ってきた時に、カッとなってしまう前に、考えてみましょう。

「私はどの自我状態から相手のどの自我状態に向けてストロークを投げたつもりだっただろう?」

「これは、相手のどの自我状態から、私のどの自我状態に向けてのメッセージだろう?」

相手が実際にどの自我状態だったか、隠された本心があったかどうかというのは答え合わせが難しいことですので、あなたがどのように受け止めるかが大切です。

あなたが自分の自我状態を変えてみて、いつもなら喧嘩になる場面で喧嘩にならなかったり、いつもなら小言を言われる場面で言われなかったり、

あなたが普段より気持ち良くコミュニケーション出来たと感じられるのであれば、

あなたの分析は正しかった可能性が高いと言えるでしょう。

相手と同じ自我状態で話すコツは?

これはもちろん、コミュニケーションを円滑にするには、ただひたすら相手に合わせるべき、と言っているわけではありません。

まずはお互いの自我状態を意識し、そのうえで、「同じ自我状態だと会話はスムーズに進む」ということを知り、

相手の状態に配慮することで、相手への声掛けや言い方、声色、タイミングなどが変わってきます。

その結果として、コミュニケーションがスムーズになるのです。

相手と自我状態をそろえるためのコツを2つご紹介します。

1)聞かれたことに明確に答える。

恋人に、「今日は何時に帰るの?」と聞かれたときに、相手はAからAへの現実的な質問を投げかけたつもりなのに、

あなたがPからの批判や抑圧と受け止めて捉えてしまうと、「私を束縛しようとしてるの?」と嫌な気持ちになってしまい、

「何時に帰ったって、私の勝手でしょ!」と、Pで返してしまったり、

「何時でも、私の好きな時間に。」と、Cの立場で返してしまうことで、

コミュニケーションが交差して、喧嘩になったり、お互いに不快な気持ちでコミュニケーションが終わったりしてしまいます。

聞かれたことに明確に答えるということが、相手の自我状態に合わせることに繋がり、

結果として、不要な言い争いや不快感を避けることが出来るのです。

「何時に帰るの?」 (A→A)と聞かれたら、「〇〇時には帰るよ。」 (A→A)と答えれば良いのです。

2)相手の気持ちに寄り添う。

また、相手の自我状態に合わせるということは、相手の気持ちに寄り添うことでもあります。

例えばあなたの奥様が、「今日は久しぶりに同級生とランチするんだよ!楽しみだな~♪」 とCの状態でストロークを投げてきた時に、

「あんまり高いもん食うなよ。いっつも贅沢ばっかしてるんだから。」などとPの対応をしてしまうと、奥様はどんな気持ちになるでしょう。

ワクワクしていた気持ちがそがれ、なんだか嫌な気持ちになるのではないでそうか。

「それは楽しみだね!何を食べに行くの?」と、まずCの状態で返せると、会話はスムーズに進みます。

相手に自分の意見や思いを伝えたいときでも、相手の状態を理解してそれを配慮した言葉がけや伝え方をすると、コミュニケーションの結果は大きく変わることがあるのです。

最後に。

普段の対人コミュニケーションを、「お互いの自我状態」という観点で分析するというのは、非常に面白いですね。

より良い対人関係を築くために、日々のスムーズなコミュニケーションは必要不可欠ですが、

人間関係というのはこれといった正解がないものです。

相手に肯定的なプラスストロークを投げかけ、相手からのストロークを出来るだけプラスに捉え、

相手の自我状態に寄り添ったプラスのストロークを投げかけるよう意識することが、

スムーズなコミュニケーションと良好な人間関係の鍵となるのかなと思います。

自分のいる世界や周りとの関係性、特に、なんだかうまくいってない、トラブルばかりになっている対人関係について、

色々な観点から考え、実際に試してみることが、状況改善への糸口になっていくと思いますが、

その1つとして、この対話分析の考え方は、非常に参考になるのではないでしょうか。

あなたは、自分の信念や理想を相手に押し付けて、「~べきだ」「~しなさい」と、

Pとしてのマイナスなストロークばかり投げかけていませんか?

もしくは、相手がA同士で冷静に合理的な話し合いがしたいのに、

いつも、Cとして感情的な態度ばかり取ってはいませんか?

お子さんがAとして必死に対等で論理的な対話をしようとしているのに、

相手をCとしてしか認めず、Pの立場で押さえつけようとしていませんか?

または、恋人から、愛情溢れたCとしての甘いメッセージを受け取ったのに、

現実的なAとして「了解。」とだけ返信していませんか?

「そういえば、あの時あんなに相手が怒っていたのは、こういうことだったのかもしれない。」

そんな風にもしあなたが思えたなら、今日この記事を読んでみた価値はあったと思います。

まずは、気付くことから。

変化は、そこから始まります。

今日も一緒に勉強してくださりありがとうございました。

神田華子でした。