様々な心理療法~交流分析③~心の栄養素「ストローク」とは?
今日は、交流分析の構成要素3つめ、「ストローク」について説明します。
これまでの記事をまだご覧になっていない方や復習したい方は、下記リンクからそれぞれのページに飛べますので、是非ご参考ください。
③ストローク (相手の存在を認めるすべての言動、ふれあい)
④対話分析 (コミュニケーション)
⑤時間の構造化 (時間の過ごし方)
⑥ゲーム分析 (不快な心理ゲーム)
⑦人生脚本 (人生のシナリオ、価値観)
「ストローク」についても、交流分析を理解するうえで重要な要素となりますので、しっかり見ていきましょう。
ストロークとは何か?
交流分析の生みの親エリックバーンは、人が精神衛生を維持するためには、絶え間ない「刺激」が必要だとしました。
相手に刺激を与えると、相手から刺激(反応)が返ってくる。
そのように、お互いに絶え間なく刺激をし合うことの繰り返しを、私たちは本能的に求めているということです。
その刺激のことを、交流分析では「ストローク」と呼びます。
ストロークとは、「相手の存在を認めた、ということを表す、すべての言動」であり、「ふれあい」とも言われています。
言葉がけや態度など、相手に対する働きかけのありとあらゆる言動は、相手にストロークを投げかけていることであり、
他者と交流すること、誰かとコミュニケーションを取ることは、「ストロークを交換する」ことと言われます。
ストロークの3つの種類を知ろう。
ストロークには、以下の3つの種類があります。
①言語的と非言語的(身体的)
②肯定的と否定的
③条件付きと無条件
ひとつずつ、詳しく見ていきましょう。
①言語的/非言語的なストローク。
言語的ストロークとは、声掛けなど言葉として与えられるストロークです。
非言語的または身体的ストロークとは、
表情や態度、しぐさ、声色、声の大きさ、姿勢や行動など
言葉以外の情報から相手に伝わるストロークです。
②肯定的/否定的(プラス/マイナス)なストローク。
ストロークにはプラスのストロークとマイナスのストロークがあります。
相手にとって心地が良ければ肯定的ストローク(プラスのストローク)、心地が悪ければ、否定的ストローク(マイナスのストローク)です。
言語的なプラスストロークとしては、「すごいよ」、「大丈夫だよ」など、相手を褒めたり、励ましたり、慰める、ということがあります。
言語的なマイナスストロークとしては、「バカ」、「あなたなんか嫌い」など、相手をけなしたり悪口を言うこと、罵倒することなどがあります。
非言語的(身体的)なプラスストロークとしては、「微笑む」、「うなずく」、「抱きしめる」などがあり、
非言語的(身体的)なマイナスストロークとしては、「にらむ」、「殴る」、「蹴る」などがあります。
③条件付き/無条件のストローク。
条件付きストロークとは、何か条件を満たした時にだけ与えられるストロークです。
条件付きのプラスストロークとは、「スタイルの良いあなたが好き」、「テストで良い点を取れたから抱きしめる」などがあります。
反対に、条件付きのマイナスストロークとは、「そんなことをするあなたは嫌い」、「テストで悪い点を取ったからぶつ」などです。
無条件のプラスストロークとは、「どんなあなたであっても大切だよ」、「生まれてきてくれてありがとう」
という
相手のありのままの存在を認めるメッセージになります。
人間に最も大切なのは、この無条件の肯定的ストロークと言われています。
そして、いちばん辛いのは無条件のマイナスストロークです。
何もしなくても殴られる、怒鳴られる、けなされる、否定される、などで、
「何をどうやってもダメな人間」、「生きている価値がない」というメッセージを相手に与えるストロークです。
ストロークは生きていくうえで、無くてはならないもの。
ストロークは相手の存在を認めるすべての言動を含みます。
「おはようございます、いい天気ですね」と声をかけて、「そうですね」と返されるというような日常的な挨拶も、
「そんなことしちゃダメ」と叱っている親を涙目で睨みつけている子供も、
すべて、お互いにストロークを投げ合っている(交換している)状態です。
このように、日常生活のあらゆる場面で、私たちは様々な形で他者とストロークを交換しています。
「心の栄養」とも例えられることのある「ストローク」は、人間が生きていく上で必要不可欠と言われています。
全くストロークの無い状態では、人間は健康な心の状態を保てないのです。
私たちが最も求めていて、得られると安心できるのは【無条件のプラスストローク】です。
でも、無条件のプラスのストロークが得られないとき、または不足している時、条件付きであってもストロークを得たいと思います。
そして、それすらも得られないのであれば、どうなるでしょう。
それは、本来は欲しくないと感じるはずの【マイナスストローク】でさえも欲しいと思ってしまうのです。
例えば、親からなかなか構ってもらえない子供が、わざと物を壊してイタズラばかりして親を困らせるのは、
「怒鳴られる」「叱られる」というマイナスのストロークでもいいので、
自分にストロークを投げかけて欲しいという、自分の存在を認めて欲しい、という気持ちから来ているのです。
プラスなストロークの交換を意識しよう。
人は肯定的なプラスストロークを求めているものですが、ストロークをどう受け取るかというのは受け手の感性に委ねられます。
自分に投げかけられたストロークをどのように受け取り、どう感じるかというのは、人生をどう生きるかという点で非常に大切なことです。
「挨拶なんて面倒くさい」と思わずに、自分に向けられたストロークは肯定的に捉え、
そして、できるだけ肯定的なストロークを返すようにしましょう。
自分がどういうストロークを出すことが多いかを意識すると、普段どのようなストロークを受けているかにも気付きます。
前回お話した人生態度、「私もOK、あなたもOK」 という、肯定的な人生態度をもとに、
無条件で肯定的なプラスストロークを、あなたの方から周りに投げかけるように意識することで、
あなたが受け取るストロークもどんどん肯定的なものに変わっていくでしょう。
職場でも家庭でもどんな場面でも、「褒める」「励ます」「労う」「微笑む」など、無条件の肯定的ストロークを、
あなたの方からどんどん投げかけましょう。
プラスストロークは出し惜しみする必要はありません。
肯定的なプラスストロークを出せば出すほど、あなたの中にも肯定的なプラスストロークがどんどん溜まって、
それが循環していくことで、より心地よい人間が広がっていくのです。
反対に、マイナスなストロークからはマイナスなストロークを得やすく、悪循環となってしまうことがあることを覚えておきましょう。
最後に。
ストロークという概念は、少しイメージするのが難しいかもしれませんが、
交流分析において非常に重要なものです。
ストロークには元々、「ひと振り」「一撃」というような意味合いがありますが、
そのイメージで、キャッチボールを想像してみていただけると、より分かりやすいかもしれません。
日ごろから、「会話のキャッチボール」とよく言いますよね。
あなたが相手にボールを投げるひと振りがストローク、相手からボールが返ってくるのもストロークです。
それを、言葉での会話だけでなく、視線や態度など、
全ての言動を使ってキャッチボール(ストロークのやりとり)をして、私たちはすべての他者と交流をしています。
1つ1つ、すべての言動です。
「なんとなく面倒で返事をしなかった。なんとなく目をそらした。悪気なく相手にぶつかった。」
このように、あなたにとってはもしかして何気ない言動であっても、相手にとってマイナスなストロークとなっているかもしれませんし、その逆もありえるでしょう。
私たちは、他人からのストロークを変えることは出来ません。
でも、相手のストロークをどのように受け止めるか、そしてあなた自身がどのようなストロークを投げるかは、
あなたに、あなただけに、決定権があるのです。
「あなたをありのまま受け入れている」という無条件の肯定的なストロークをたくさん発して、受け取り、
あなたの人生を、より前向きで肯定的なものにしていきましょう。
それでは、今日はここまで。
今日もここまで一緒に勉強してくださりありがとうございました。
神田華子でした。