様々な心理療法~交流分析①~「自我状態」あなたの中に5人の自分がいる?!

今日から、色々な心理療法について説明するシリーズを始めたいと思います。

シリーズの第一弾は「交流分析」という心理療法について説明したいと思います。

交流分析をザックリ説明すると?

「TA(Transactional Analysis)/ 交流分析」を簡単に説明すると、

個人のパーソナリティ(人格)やコミュニケーションスキルの成長を促す心理療法で、

人間の抱える悩みはほとんどが人間関係によるものだとする考えから開発されました。

他人と関わる時に、どのような状態の自分で相手に接することが多いか、つまり、

自分がどのような傾向を持って対人関係を構築しているか、ということに着目し、その方法を変えていくことで、対人関係のトラブルを解消していこうというものです。

交流分析の起源。

交流分析は1950年代後半に、アメリカの精神科医エリック・バーンという方が提唱した心理療法です。

精神分析という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、精神分析というのは非常に複雑で難解であり、このエリックバーン先生も精神分析を勉強されていた方だそうですが、試験に落ちてしまったそうです。

そこで、その複雑な精神分析という理論を、より一般向けに分かりやすくするために開発されたのが、この「交流分析」だと言われています。

交流分析を構成する7つの要素。

交流分析では、自分が個人としてどのような性質を持っているか(パーソナリティや人格と呼びます)、その上で、どのように他人と関わっているかを分析し、個人の成長を促す方法です。

交流分析における7つの重要な構成要素を説明します。

①自我状態 (自分の中の傾向、心の成り立ち、エゴグラム)

②人生態度 (人生の基本的立場)

③ストローク (相手の存在を認めるすべての言動、ふれあい)

④対話分析 (コミュニケーション)

⑤時間の構造化 (時間の過ごし方)

⑥ゲーム分析 (不快な心理ゲーム)

⑦人生脚本 (人生のシナリオ、価値観)

タイトルだけでは良く分からないと思うので、1つずつ解説していきます。

自我状態 (自分の中の傾向、心の成り立ち、エゴグラム)とは?

自我の状態、というと、分かるような分からないような気がしますね。

私たちの中には、大きく分けると3つの自我があると言われています。

・親の立場であるP (Parent)

・理性的に考える大人の立場であるA (Adult)

・子供の心を持つC (Child)

そして、PとCをそれぞれさらに2つに分けて、以下の5つの自我状態があるとされています。

(1) CP : 厳しい私 (批判的な親) ・・・ Critical Parent

(2) NP : 優しい私 (援助的な親) ・・・ Nurturing Parent

(3) A : 現実的な私 (理性的な大人) ・・・ Adult

(4) FC : 自由な私 (自由奔放な子供) ・・・ Free Child

(5) AC : 合わせる私 (順応な子供) ・・・ Adapted Child

簡単に言うと、頑固おやじCP、優しいお母さんNP、合理的なA、自由奔放なFC、空気を読むACという感じでしょうか。

どの自我状態が良い・悪いではなく、それぞれに良い面と悪い面があり、

私たちは皆、TPOによりこの自我を使い分けています。

P・A・Cのどの傾向が強いかというのは、それまで育ってきた環境によるところが大きく、人によってそれぞれ違います。

良い面も悪い面もある。

先にもお伝えしましたが、どの傾向があると良い、どの傾向が強いと悪いという話ではありません。

ただ、人間関係のトラブルが多い方は、もしかしてどれか1つの自我が強く出過ぎていたり、相手や状況に応じて適切に切り替えが出来ていないという可能性があります。

CPの良いところは、信念や理念を持ち社会ルールを守ること、正義感が強く主張する強さがあることが言えますが、

それが強すぎると命令口調や、人に対して批判したり支配したり、自分の価値観を強引に押し付けてしまうことがあります。

NPの良い面として、思いやり、親切、親身になってお世話をしてくれる、などがありますが、

行き過ぎると過保護やおせっかいとなり、相手の自立を妨げることになります。

Aの良いところは、冷静で論理的、現実的な判断が出来ることですが、

反対に打算的で損得を重視したり、考えすぎて行動ができなかったり、無機質で人間味がなくなってしまいます。

FCの良い面は、自分の感情や欲求に正直でそれを自然に表現することができますが、

いきすぎるとわがままで自分勝手になったり、社会ルールを守れなかったりします。

ACの良い面として、相手の気持ちを配慮することが出来、協調性があり、集団の輪を大切にすることがありますが、

いきすぎると自分を抑えて周りに合わせすぎてしまって疲れてしまうことなどがあります。

自我を使い分けている例。

他の記事でもよくお伝えしていますが、同じ出来事に対してでも、私たちは人によって感じ方、考え方、行動が違います。

そしてまた、同じことが起きても、相手が違えばまったく違う反応をしてしまうことがあります。

この理由を交流分析では、私たちの自我状態が違うからだ、というわけです。

例えば、あなたが交通事故を目撃したとします。

「あんなにスピード出すから悪いんだ!」と思うあなたは、Pの状態(~すべき/べきでない)という傾向が強く

どれくらいスピードが出てたかな?ウインカーは出ていただろうか?」状況を冷静に考えるのならばAの状態(現実的で合理的な判断)

「うわ~交通事故見ちゃった!怖いな~!」感情を優先させるのはCの状態(自由で自然で人間味にとんでいます)、という具合です。

このように、交流分析ではまず自分の自我状態を確認していきます。

自我状態についての説明は、分かりましたか?

■最後に。

長くなりましたので、今日はいったんここで終わりにします。

今日は、交流分析7つの構成要素のうちの1つである、自我状態について説明しました。

人と関わるときの思考や感情の癖、行動の傾向を、「自分の中の異なる自我」と定義して捉え、分析していくというのは、非常に興味深いですね。

自分が普段からどのような自我状態で物事を見ていることが多いかと考えてみると、なかなか面白いのではないでしょうか。

あなたも、今日1日を振り返って、どんな場面でP・A・Cが出てきたか、思い出してみてはいかがでしょうか。

「エゴグラム診断」などで検索すると自分の傾向をチェックすることも出来ます。

1つの参考指標に過ぎないとは思いますが、

自分の傾向が分かれば、例えば対人関係に困難を感じているとき、

そのバランスを調整することでうまくいくことがあるかもしれませんよ。

交流分析という心理療法や考え方は初めて知った、という方は、引き続き一緒に勉強していきましょう。

ということで、今日はここまで。

何かのご参考になれば嬉しいです。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

神田華子でした。