言いたいことを言えないあなたへ。アサーションを学んでみよう!
頼まれたことを断れない・・・。
気に入らないことがあるとつい声を荒げてしまう・・・。
そんな風に、言いたいことを言えない、うまく伝えられないと、悩んでいませんか。
今日は、自分も相手も大切にする表現方法、「アサーション/アサーティブ・コミュニケーション」についてお話します。
本当は嫌なのに嫌と言えない、または怒りで表現することしかできない。
そんな方にとっては、このアサーション/アサーティブ・コミュニケーションを学んで実践できるようになると、人間関係がぐっと変化するはずですよ。
今まで抑え込んでいた自分の気持ちや意見を適切に表現できるようになると、自分の人生の主導権を自分に取り戻すことができます。
意識するだけでも違いますから、是非読み進めてみてくださいね。
アサーション/アサーティブ・コミュニケーションとは
アサーション「Assertion」の英語の意味は「断言・主張」というような意味になりますが、心理学の世界では「適切な自己表現」や「健全な自己主張」という風に説明されています。
この「アサーション」を取り入れたコミュニケーションを「アサーティブ・コミュニケーション」と呼びます。
厳しい家庭や過干渉な親の元で、自分を表現するということを学ばない環境で育つと、大人になっても自己主張をすることが苦手なままでいることが多いです。
そのことに、1940年代にアメリカの行動療法家のアンドリュー・ソルターという方が自著の中で着目し、
その後1950年代に精神科医ジョセフ・ウォルピという方が、人間関係にトラブルを抱え自己表現が苦手な方のための、コミュニケーションスキルを上げる訓練法として、アサーション・トレーニングを開発しました。
その後は心理療法の一環として、医療機関やカウンセリングの中のみで実施されてきたものが、
1970年代に黒人差別への問題意識の変化に伴い、「誰でも自分の意見を表現する権利がある」という考えのもと、「アサーション」が一般的に広がったそうです。
日本には、1990年代に臨床心理学者の平木典子さんという方が、アメリカで学んだアサーションを日本に紹介し、今ではビジネスの場や日常生活で使えるコミュニケーションスキルとして知られ始めています。
自分を理解し、大切にすることから始まる
アサーション/アサーティブ・コミュニケーションの基本は、自分を理解し大切にすることです。
周りの意見に流されず、自分がどういう気持ちか、どうしたいか、という、自分の内面を意識することから始まります。
そして、その自分の気持ちや、やりたいこと、実際の行動が伴っていないのであれば、
自分を大切にするためにもハッキリとそれを相手に伝えましょう、ということです。
誰にでも、自分の気持ちや意見を表現する権利があるんです。相手にも、あなたにも。
そして、その権利は尊重されるべきものです。
そういった考えのもとで行われるのが、アサーションです。
なので、あなたの気持ちを表現する際にも、相手の気持ちを尊重し、相手を傷つけない方法や言葉選びを意識しましょう。
そこまでが、あなたの責任です。
それ以降の、相手がどのようにそれを受け入れるかは、相手の責任です。
それはしっかりと分けて考えましょう。
自分のアサーションに対し、相手がどのように反応したかというところまで見届けて、今後の対応に活かしていけると、より良いですね。
自分の意見を言うことで嫌われることはない。
自分の思っていることや意見をはっきり言うと嫌われてしまうかもしれない、と不安でしょうか?
そんなことはありません。
むしろ、自分に正直に、且つ相手を気遣った表現をしてくれるあなたを、もっと好きになってくれる人が現れるはずです。
もし、あなたが自分の気持ちや意見を表現したことで、あなたから離れていく人がいたとしたら、
その相手はもともとあなたのことを好きだったのではなく、「自分の言うことを聞くあなたが好きだった」だけなのです。
相手の思い通りに行動することでしか繋ぎ止められない関係なのであれば、その相手はあなたが本当に困ったとき、必要な時に、助けてくれる相手ではありませんよね。
困ったとき、苦しい時、人生を切り開いていけるのは、最終的には自分だけです。
そんな自分自身が、心地よく日々を過ごし、困難にも立ち向かえる強さやしたたかさを内面に携えておくために、自分を利用してくる他人ではなく、自分自身を大切にしましょう。
自分を大切にすることで心に余裕が生まれ、周りのことも適切に大切にすることができるのです。
全員に好かれなくとも、そんなあなたを好きでいてくれる人とだけ人間関係が深まれば、あなたの気持ちはずっと楽になり、人生はきっともっと、楽しくなると思いませんか。
具体的なアサーションの方法は?
アサーション/アサーティブ・コミュニケーションの実践方法として、いくつか代表的なものを紹介しますね。
①YouメッセージをIメッセージに変える
相手に何かを指摘するときに、「You(あなた)」を主語にするのではなく、「I(自分)」を主語にしましょう。
例えば、パートナーが部屋をまったく片づけてくれずに嫌な気持ちになるのであれば、
「あなたはもっと部屋を綺麗にするべきだ!」と、Youメッセージで伝えるのではなく、
「私は部屋が散らかっているとイライラしちゃうから、使ったものは元に戻してくれると嬉しいな。」という具合です。
Iメッセージで伝えることで、相手が責められている、攻撃されていると身構えることも減り、あなたの意見を素直に受け入れやすくなります。
②DESC法
自分の意見を段階的に表現するための、DESC法という表現方法があります。
Describe(描写する)、Explain(説明する)、Suggest(提案する)、Choose(選択する)の頭文字をとったものです。
(※英語の表記は人によって、ExplainがExpressとなっていたり、SuggestがSpecify だったりするようですが、言わんとすることは同じですので、大丈夫です。今回は私が、より覚えやすいと個人的に思った英語の表現を使っています。)
1)Describe(描写する):ここでは単に事実を描写します。
例えば、休みの日は部屋にこもってゲームばかりしている夫に対しての表現を例文として挙げていきましょう。
「ねぇ、最近週末は朝から晩までずっと部屋にこもってゲームしてるわよね。」
ここでは、現状や解決したい問題について客観的な事実だけを述べます。
あなたが解釈していることや思い込み、推測で話を勧めないよう注意しましょう。
推測や思い込みで話をしてしまうと、相手もあなたの話を受け入れられなくなってしまうことがあるので、注意してください。
2)Explain(説明する):ここで、自分の意見や気持ちを説明します。
「せっかくの休みなのに家族で一緒に楽しめないのが、私はすごく寂しいなって感じちゃうの。」
ここでも、Iメッセージで自分の気持ちを素直に伝えましょう。
感情的になって本当に伝えたいことと論点がずれてしまったり、感情が高ぶって攻撃的にならないように注意しましょう。
3)Suggest(提案する):問題を解決するためのアイデアや代替案を提案します。
「だから、午前中はゆっくり寝ててもゲームをしててもいいから、お昼ご飯を食べてから晩御飯が終わるまでの時間帯は、家族で過ごす時間にしない?」
ここでは、あくまで「提案」ですので、強制的な内容や、命令口調にならないように注意してください。
4)Choose(選択する):ここで、相手があなたの提案を受け入れた場合と、受け入れられなかった場合の選択肢を提示します。
「家族で出かけるときには、あなたが行きたいところにも行くようにしましょう」
「それが難しいなら、私が一人でも気分転換できるように、毎週末5000円のお小遣いっていう制度にしない?」
または、新たな選択肢を提示して、どちらか選んでもらうということもできます。
「どうしても1日は家でゆっくりしたいなら、土曜日か日曜日どちらか1日だけでも良いから、家族で出かけるようにしましょうよ。」
こういった選択肢を与えることによって、相手に一方的な印象を与えず、押し付けずに建設的な解決策・妥協案を導き出しやすくなります。
ビジネスの場でも、例えばこんな風に使えますよ。
「今日お声がけいただいている部長との飲み会の件ですが・・・」
「D:突然お声がけいただいて」
「E:大変ありがたいのですが、実は明日までにお客様に提出しないといけない書類があって、何時までかかるか分からないんです。」
「S:終わってから参加するにしても何時になるか分からずご迷惑おかけしてしまうので、また次回参加ということでよろしいでしょうか。」
「C:お詫びに、次回は僕が部長が好きそうなお店を探しておきます。」
「C:来週だったら参加できると思うので、来週でいかがでしょうか。」
こういったイメージです。
この例文を読んで、「そもそも上司と飲みに行きたくないんだよ・・・」と思われた方もいるかもしれません。
どうしても断りたい時には、下記の方法で表現してみましょう。
③相手を肯定・感謝して断る。
自分を大切にして幸せな毎日を送るためには、時には断る勇気というのも必要です。
そんなあなたは「相手を肯定し、感謝して断る」ということを心がけましょう。
しっかりと理由を伝えつつ、相手の意見への肯定や感謝の気持ちは表現した上で、誠意を持って断りましょう。
先程の飲み会の例で行くと、例えばこんなふうに言うことが出来ます。
「夜にご一緒させていただけると本当に親睦が深まるし、お声がけいただいて大変嬉しいんですが、うちはまだ子供が小さくて、妻も大変そうなので、しばらく客先との会食以外は控えているんです。」
その上で、相手との関係性を今後どう構築していきたいかにもよりますが、やはり何らかの代替案は伝えると、より良いですね。
「ランチであれば問題ないので、今度ぜひご一緒させてください」や、
「子供がもう少し大きくなって家庭の状態が落ち着いたら、僕からお声がけさせてください」といった具合です。
もちろん、自分にとって本当に必要ないと感じていることであれば、丁寧に断るだけで終わらせてしまっても大丈夫です。
たとえば、保険会社の営業をしている友人にしつこく勧誘された場合なんかは、
「営業ってほんとに大変よね。色々説明してもらってすごく勉強になったし有難いんだけど、うちはもう別の保険に入っていて、内容も理解した上で満足してるから、変える気はないのよ。」
一度決めた断り文句を、何度誘われても、同じように繰り返して問題ありません。
相手はあの手この手で説得してくるかもしれませんが、毎回違う文言を考える必要はありません。
ひたすら誠意を持って丁寧に断り続け、諦めてもらいましょう。
最後に。
色々なアサーションの方法をご紹介しましたが、アサーション/アサーティブ・コミュニケーションで最も大切なのは、実はこうしたテクニックではありません。
1番大切なもの、それは、あなた自身の考え方です。
「自分で自分の人生をコントロールしたい、自分には、自分の意見を適切に表現し、相手に伝える権利がある。
それをどう受け取るかは相手次第で、そんな自分に相応の人間関係が残ったり、新しく作られればそれでいい。」
心の中であなた自身がそう納得し、現状を変えたいと思えるかどうかということが、小手先のテクニックよりも、よほど大切です。
そうした意識を持ち、自分が感じて考えていることが分かるようになることで、自分が今、何が出来るかも分かってくるのです。
その先に、今とは少し違う人間関係と、今とはまったく違う人生が待っているかもしれません。
あなたが勇気をだしてアサーションを取り入れて、今より少しでも、自分らしい毎日を送れますように。
神田華子でした。