共依存とは?恋愛や親子関係、職場でも起こりやすい不健全な人間関係の克服法とは!

今日は、「共依存」という関係性についてご紹介したいと思います。

「彼には私がいないとダメなの・・・」

そのように、不利益を被りながらも、かいがいしく相手に尽くしている友人が周りにいませんか?

または、あなた自身がそのように感じたり、行動していたという経験はないでしょうか?

そのような人は、共依存の関係性に陥ってしまっている可能性があります。

「共依存」とは読んで字のごとくで、何となく「共に依存している」という意味は分かるけど、

「お互いに依存し合うことが、人間関係においてそんなにダメなことなの?」と、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

共依存とは、片方が極端に自分を犠牲にすることで成り立っている不健康な人間関係であり、

自分も相手も不幸にしてしまう、破滅的な関係性と言われています。

一体どういうことなのか、特に冒頭の質問に当てはまる方は、是非、今日の記事を最後まで読み進めてみてくださいね。

共依存とは何か、どういう人が陥りやすいのか、そしてその克服法まで、ご紹介したいと思います。

それでは早速一緒に勉強していきましょう。

共依存とは、依存しあっている人間関係・心理状態

「共依存」とは他人に頼られることで安心できる人と、頼ることで相手をコントロールしようとする人との依存・被依存の関係のことを指します。

英語ではそのまま、Co-Dependencyと言います。

何かしらの依存傾向がある人や問題を起こす人と、自己犠牲をしてでもそれを支えてあげる人によって成り立つ関係性です。

共依存の歴史

「共依存」とは、元々は1970年代にアメリカのアルコール依存症の臨床で生まれた言葉です。

アルコール依存症患者の治療の過程で、患者の家族(主に奥さん)との関係性を調べていくうちに、

彼女らの献身的なサポートによって、アルコール依存症患者の治療が進まないということが分かってきました。

献身的なサポートとは、具体的には例えば、自分の時間や楽しみをすべて犠牲にしてパートナーのために尽くしていたり、

アルコール依存による借金を肩代わりしたり、酔ったパートナーに暴力を受けても「この人は私がいないとダメだから」とその人から離れない、などです。

このような過度に献身的なサポートにより、患者の主体性や自主性がなくなってしまうという問題が浮かび上がり、

このような関係性を「共依存」と呼びました。

今ではアルコール依存症患者とその家族だけでなく、より広い対象で同じような関係性を指す言葉として使われています。

共依存がなくならない理由

共依存はどうしてなくならないかというと、そうした依存関係にメリットを得ている人達がいるからです。

依存される側の人・すなわち依存者に対してあれこれ世話を焼いてあげたり、依存者が取るべき責任を代わりに取ってあげたりする人のことを「イネイブラー」と呼びます。

これは英語のEnablerという単語から来ていますが、簡単に言うと「可能にする人」という意味です。

つまり、「依存することを可能にしている人=相手を依存させている人」ということで、

この「イネイブラー」の存在が、共依存が無くならない原因となっています。

イネイブラーの人達は責任感が強く、思いやりが深く、困っている人に手を差し伸べる優しさで溢れているため、周囲から素晴らしい人だと評価を受けやすいです。

しかし、イネイブラーの行動により、相手が自分で自分の悩みや問題に向き合ったり解決することを妨害している、自立を妨げているという問題があるのです。

善意から来ているように見えるイネイブラーたちの行動ですが、実際には誰かの役に立つことでしか自分の価値を感じられず、

誰かに頼られていないと不安になるため、そんな自分の自尊心を満たすために相手の依存を利用していると考えられます。

イネイブラーの人たちは、無意識に相手が成長したり自立することを拒み、自分の存在価値を感じ安心するために、相手を依存症のままにしておくことを望んでいるのです。

このイネイブラー側のニーズが、自分で責任を取りたくない、他人に依存したい依存症側の人達のニーズとマッチしてしまうので、共依存はなかなかなくならないのです。

様々な問題を引き起こす「破滅的な人間関係」  

共依存の関係性では、お互いに成長することが出来ません。

また、自分のすべてを犠牲にして病的に相手に尽くしてしまいますが、状況は良くなるどころか悪化してしまいます。

共依存に陥っている時は、自分がイネイブラーだと気付いているわけではないので、自分の態度や行動が、相手の問題行動を助長していると気付けず、

また、心の底ではそのことに気付いていたとしても、共依存関係が深まってしまっていると、なかなかその状況から抜け出すことができません。

また、「あなたのために、これだけ尽くしているのに」という気持ちが強く、視野が狭くなったり、相手の愛情を独占したくなり、束縛心が強くなったりしてしまいます。

この状態は、相手に尽くし、自分に依存させることで、相手をコントロールしようとしているとも言えますね。

このように、自分を極端に犠牲にして相手に尽くしているイネイブラーの人達は、

次第にストレスや自己否定感、無力感が強くなっていき、精神を病み、関係性に悩んで自殺にまで至ることもあります。

女性の方が多いと言われているのはなぜ?

共依存には、女性の方が陥りやすいと言われています。

これは、イネイブラーになってしまいやすいという意味です。

その理由は、一般的な人間関係構築の傾向として、

男性は自己優先志向で、支配や権力を示したいという傾向が強いのに対し、

女性は他人への依存心や、愛情欲求や承認欲求が高いと言われているためです。

また、昔からある、女性は感情を抑え三歩下がって男性に従うべきという「理想の女性像」という社会通念の影響もあると思います。

プライドが高く自分の信念を頑固に貫く強さがある男性に対し、相手からどう見られているかを気にし、良く思われたいがために相手に合わせてしまうという傾向も、女性の方が強いとされています。

確かに、無下に扱われている相手にハマっていたり、我が子への依存心が強いのは、女性の方が多い気がしますね。

共依存に陥りやすい人に共通する特徴とは?

性別に関わらず、以下のようなタイプは共依存に陥りやすいとされていますので、当てはまる方は注意してみてくださいね。

お世話好き

自分が助けてあげなければという気持ちが強く、ついつい相手のことに口を出したり、過度にサポートしてしまうという方は、注意してください。

困っている人を助けてあげる優しい気持ちはとても素晴らしいことですが、

相手が出来ることまでせっせとやってしまったり、頼まれていないことまで先回りして世話を焼き過ぎてしまうと、徐々に、相手を依存させてしまいます。

また、そういう優しい人のところには、当然ながら「世話を焼いてほしい人」が集まってきてしまうものです。

その気はないのに放っておけないと世話を焼き続けてしまい、いつの間にか共依存の関係が出来上がってしまいます。

自尊心・自己肯定感が低い

気丈に振舞っていても、心の奥底では本当の自分に自信がない・・・という方も要注意です。

自分で自分自身に価値を見出せず、相手から頼られることのみで自分の価値を感じられるので、共依存に陥りやすいです。

そして、「相手から愛されている私・頼りにされている私」という状態でしか、自分がそのままでいることの安心感を得られないため、

自分の存在価値を感じさせてくれる相手との関係性に固執してしまい、

不健康な関係性だと気付いていても抜け出せないという状況に陥ってしまいます。

また、自分の価値を低く見ているため、嫌われることを恐れて相手に言いたいことが言えずに感情を抑え込んでしまったり、

相手に問題があるのは自分のせいだと考えてしまったりもします。

他人との境界線が薄い

自分と他人との境界線が薄い人は、他人のことを自分のことのように捉えてしまったり、

相手が自分の領域に入り込んできてもハッキリとNoと言えません。

そうしたことから、相手の責任を一緒に抱え込んでしまったり、相手の問題を自分の問題として捉えてしまったりし過ぎることで、共依存に陥りやすくなります。

また、共依存になりやすい人には、過去のトラウマや家庭環境の影響もあると言われています。

セルフチェックで自分の傾向を知ろう。

共依存とは人間関係の状態を指す言葉であり、病気ではないので診断名としては存在しないものですが、

共依存のセルフチェックなるものは巷にたくさん出ています。

上記の特徴に当てはまるかも、と思った方は、是非ご自身の傾向を知るために、一度やってみるのも良いかもしれません。

ただし、セルフチェックはあくまで参考程度であって、その傾向があるということが必ずしも共依存に陥るということではありませんので、注意してくださいね。

共依存になりやすい関係とは?

親子関係

共依存は親子関係で起きやすく、特に、母と娘のように同性間で生じやすいと言われています。

親が我が子を自分の一部のように見ていると、過干渉、過保護、過剰なコントロールに繋がり、子供の成長や自立を妨げてしまいます。

「ママがいないとダメなのね」と言いながら、嬉しそうにしているお母さんを見たことはありませんか?

これは、我が子にとって必要不可欠な存在になることから快感や安心感を得ている状態です。

また、夫婦仲が悪く、子供との関係性に執着しているケースもあります。

「私にはこの子しかいない」と、子供との関係性を生きがいにして過度に干渉したり心配し、

子供はなにも自分で決められないようになり、親から離れられなくなり、共依存に陥ってしまいます。

恋人・夫婦関係

夢追い男子やDV夫、依存症夫をボロボロになりながら献身的に支える女性というストーリーは、小説やドラマの中だけでなく、現実世界であなたの周りにもいたのではないでしょうか。

周りから見ると、「別れればいいのに」「逃げればいいのに」と思えるような状況でも、

「でも彼を理解してあげられるのは私だけなんだ」

「私が支えてあげないとダメな人なの」

などと、関係性を解消しようとしないことがあります。

必要とされたい、必要とされなくなることが怖いという気持ちが強く、

自分より相手を優先し、感情を表現できずに相手にあわせ、傷つけられても我慢してしまいます。

職場

上下関係のハッキリしている職場でも、共依存は起きやすいです。

上司が何でも指示をしてくれ世話を焼いてくれると、部下は責任を取らなくて良くなりますので助かります。

あれもこれも細かく指示され管理されることで、窮屈ではあるんだけど、ありがたいし楽だな、という依存関係が生まれます。

そして、そんな上司は部下から頼られていることで存在価値が高まると考えているため、心の奥底では部下の自立を拒んでいるのです。

共依存と親密な関係性の違いって何?

親密な相手であれば、相手のために自己を犠牲にすることは当然なんじゃないか?

どこまでが親密な関係性で、どこからが過度な自己犠牲や、共依存的な関係性になってしまうのか分からない、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

共依存と親密性には大きな違いがありますので、そのいくつかを紹介します。

例えば、親密性ではお互いの自己の成長を優先するのに対し、共依存では「愛する誰かを得たい」ということを優先しています。

また、親密性ではお互いの自由を尊重しますが、共依存では「相手に性的な関係やコミットメントを求める」傾向が強いです。

また、親密性ではお互いの関係はフラットなのに対し、共依存では、「支配する側とされる側」という、上下関係的な権力構造が見られます。

他にも、あるはずの信頼感が欠如している、長期的な快感や満足感が不足している、問題に対して一緒に話し合って解決出来ないなど、

やはり、共依存では健全な関係性は築けていない、ということが分かりますね。

共依存を克服する方法とは?

さて、共依存について色んなことが分かったところで、どうやったら共依存を克服できるのかを見ていきましょう。

まずは自覚する

どんな変化も、まずは現状把握から始まります。

自分が共依存に陥っているということを自覚しましょう。

相手のことばかり気にして自分をないがしろにしていないか?

相手との関係性に盲目に執着していないか?

一度、自分と相手との関係性を振り返ってみましょう。

自分を大切にする

相手ではなく自分を優先できることが、自分を大切にするということです。

他人に対して何かしてあげたい・してあげるべき、という他者貢献の気持ちが強い方は依存関係になりやすく、

そのように長い間、他人軸で生きてきた方が、自分軸に戻すというのは難しく感じるかもしれません。

でも、決して変われないわけではありません。

私も昔は依存傾向が強く、共依存だと指摘されたこともありますが、今ではかなり自分軸を取り戻せています。

焦らず、少しずつ変えていきましょう。

※どうやったら自分を優先できるか分からないという方は、是非この記事も参考にしてください。→ 自分より他人を優先してしまうあなたへ。どうしたら自分を大切に出来るの?

自分を大切にしてはじめて、きちんと他人を大切にできるようになるのです。

具体的には、相手に決めてもらうのではなく自分で決める、自分時間を作る、自分の快・不快を基準にする、自分の気持ちをきちんと伝える、などです。

相手に決めてもらうのではなく自分で決める

相手の都合や好みばかり気にして、相手にすべてを決めさせていませんか?

何かを選択するという責任や煩わしさや相手を不快にするリスクを回避して相手に決めさせてばかりいると、心理的にも依存しやすくなります。

自分のことは自分で決める、という意思をしっかりと持ちましょう。

何を食べるか、どこに行くかなどの些細なことで構いませんので、自分で決めたという実感を持つ機会が増えることで、自立心が高まります。

※自分のことを自分で決める重要さは、こちらの記事で解説しています。→ 言葉が変われば人生が変わる。「どっちでもいい」を、やめてみませんか?

自分時間を作る

そして、しっかりと自分のための時間も作り、好きなことを楽しんだりリフレッシュする、一人の自分時間を充実させましょう。

一人で自分の時間がきちんと大切にできると、他人にも自分の時間があるんだということが分かり、尊重できるようになります。

そうして、誰かに依存していなくても大丈夫と、不安が薄まり、少しずつ心が落ち着くようになります。

自分の快・不快を基準にする

また、「良い・悪い」や「正しい・間違っている」という判断基準ではなく、

「自分が心地よい・楽しい」と思えるかどうかを判断や行動の基準にすることを意識してみましょう。

「本当は嫌だけど、こんなに困っているなら助けてあげるべきだ」と、自分の信念や価値観をベースに相手をサポートするのと、

「相手を助けてあげると気分がいい」と思ってサポートするのは、まったく気持ちが違いますよね。

※誰のために相手に優しくしているのか分からない、という方は、この記事も読んでみてください。→ 優しい人は損をする?あなたの優しさは誰のため?

自分の気持ちをきちんと伝える

共依存になりやすい人は相手の気持ちを配慮しすぎて自分の気持ちを押し殺しがちですが、

人間関係において自分の意見や気持ちを相手を傷つけない方法で伝えられるようになることは、罪悪感を持たずに嫌なことをきちんと断れたり、適切に怒りを表現出来たりするために、とても大切です。

相手の思いや立場を汲んだ上で、自分の気持ちをきちんと相手に伝えることが出来れば、

「あなたのことも大切にしたいが、自分のことも大切にしたいんだ」ということも相手に表現することができます。

適切な自己主張ができるようになることで、誰かに過剰に依存したり・されたりする自分から抜け出し、健全な人間関係を構築できるようになります。

※言いたいことを言えるようになるためには、自分も相手も大切にする「アサーション」についてご紹介したこの記事も参考にしてみてください。

→ 言いたいことを言えないあなたへ。アサーションを学んでみよう!

相手との境界線を引く

他人と自分の境界線が分からないままだと、相手の問題を自分の問題のようにとらえてしまい、いつまでも共依存からは抜け出せません。

どこまでが自分の課題で、どこからが相手の課題かという境界線を、しっかりと意識することが大切です。

そうすることで、過剰に相手の領域に踏み込まないという線引きが出来るのです。

「この問題の責任を最終的に取るのは誰だろう?困るのは誰だろう?」と考えた時に、

それが自分ではない場合は、相手の課題です。

過度に支援したり干渉したりせずに、必要なことを適切な範囲内でサポートしてあげましょう。

自分が無理をしている、感情をおさえている、相手との関係性が窮屈、と感じたら、

一旦その相手と距離を取り、境界線を引き直すべき時です。

※境界線については、こちらの記事でも触れていますのでご参考ください。

→ 他の人が怒られているのが気になる、優しいあなたへ。

誰かに話したり、カウンセリングを受ける。

共依存とは、とても濃く密接に繋がっている親密な関係です。

共依存だと気付いただけでは、自分では抜けられない、やめられないほど、深い沼にハマっていることもあります。

そして、自分のことというのは客観的に見ることが難しく、視野が狭く周りが見えなくなっていることも多いです。

そんな時、信頼できる第三者に話すことで、自分の置かれている状況や感情が整理されたり、

相手から客観的な意見やアドバイスをもらえることで、自分では気付かなかった視点に気付けたり、健全な関係性を取り戻ることが出来やすくなると思います。

親子関係や夫婦関係、パートナーシップを専門に扱っているカウンセリングでしたら、専門的な知識や豊富な経験値で、

より具体的なアドバイスをもらえたり、関係性改善のためのステップを一緒に考えてくれるでしょう。

最後に。

共依存は、抜け出すことができるものです。

まずは知ること、気付くことがスタートですが、そこから実際に行動に移すかどうかは、自分次第です。

共依存が進むと、自分も相手も不幸になっていきます。

そんな破滅的な関係性を解消し、健全な関係を取り戻していくために、何が出来るか。

出来そうなことから、始めてみてくださいね。

そして、本当はいつも感じている違和感や、抑え込んでいる感情に背を向けずに、きちんと向き合ってください。

変化は怖いことかもしれません。

でも、他人に遠慮して、怯えるように誰かのための人生を生きる義務なんて、あなたには微塵もありません。

自分自身という核をしっかり持ち、その自分を大切にする、ということを、強く心に刻み込んでくださいね。

行動を起こすということは、とても勇気のいることだとも思います。

でも、その一歩を踏み出した先に、今よりもっと心から笑えているあなたがいるんじゃないかと思います。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

神田華子でした。