心配性な性格は生まれつき?それとも変えられるの?クロニンジャー理論について知ろう!
「自分は心配性だから」「ずっとこういう性格だから」というようなことを、
誰かが言っているのを聞いたことはありませんか。
性格といっても色々な性格がありますが、
どこまでが生まれつきで、どこまでが変えられるものなのでしょうか。
今日は、アメリカのクロニンジャー博士が提唱したパーソナリティ理論/TCI理論をご紹介します。
あなたの今の性格は、生まれつきだと思いますか?
あなたは、その性格を変えたいですか?
人間の性格って、そもそも変えられるのでしょうか?
変えられない性格はあるのでしょうか?
そんなお話です。
ワクワクしますね!
それでは早速、勉強していきましょう。
クロニンジャー博士のパーソナリティ理論/TCI理論とは?
パーソナリティ理論/TCI理論とは、簡単に言うと、
私たちのパーソナリティ(人格・その人らしさ)は、
生まれつき備わっている遺伝的な要素の強い「気質」と、
育ってきた環境によって培われてきた「性格」とで、構成されているというものです。
アメリカのワシントン大学で生理心理学や生物学精神医学を研究していた、クロニンジャー博士という方が提唱しました。
TCIとは、Temperament and Character Inventoryの頭文字を取ったもので、
Temperament=気質、Character=性格を表します。
(Inventoryは何でしょうね。リスト、といった感じかな?)
もともとは鬱病の治療などの目的で開発された理論だそうですが、
世界各国で実証、研究されている信頼性の高い理論と言われています。
脳内物質の量が、生まれ持った「気質」に影響している?
私たちの感情は、脳内の神経伝達物質の分泌により作られています。
この脳内伝達物質の分泌と代謝が私たちの性格の根底となる「気質」に関連しているとみられ、
それによって物事に対する感じ方や見方が変わります。
具体的には、セロトニンやドーパミン、アドレナリン等の脳内物質の分泌によって
私たちは不安を感じたり興奮したりしているのですが、その物質の受容体の量が、遺伝的に決まっているというのです。
例えば、私たち日本人はセロトニンが少ないタイプの遺伝子が多いという研究結果があるそうですが、
セロトニンの量が少ないと、ささいなことで不安になったりクヨクヨ悩んだり、気持ちの切り替えがうまくいかないといったことが起こります。
日本人は、不安を感じやすいからこそ完璧主義が広がり、協調性を高め集団でかたまることで、危険を回避しようとするのかもしれませんね。
脳内物質については、過去の記事も是非ご参考ください。
→ 心はどこにある?感情はどこからやってくる?ちょっとした脳科学のお話
クロニンジャー博士の理論では、私たちのパーソナリティ(人格・その人らしさ)は、
このような遺伝的な要因である「気質」と、その後の環境等で培われる「性格」とに分けて考えることができるとしています。
もう少し、詳しく見てみましょう。
クロニンジャー理論の7つの因子とは?
クロニンジャー博士は、因子遺伝的要素の強い4つの「気質」と、成長する過程で形成される3つの「性格」を、下記のように分類しました。
「気質」と呼ばれる4つの因子
最初の4つの因子(気質)は遺伝的な要素で決まってしまい、私たちは生まれたときからその影響を受けています。
① 新奇追求 ・・・新しいものを追求しようとする性質。冒険好き。
② 損害回避 ・・・損害を避けようとする性質。心配性。
③ 報酬依存 ・・・人から褒められたり認められたいという報酬を求める性質。人情家。
④ 固執 ・・・ものごとを辛抱強く一生懸命にやり続ける性質。粘り強さ。
幼い頃から「活発な子」「のんびりした子」「慎重な子」「こだわりの強い子」などの特徴があらわれるのは、
この因子によるものが大きいとされています。
どの項目が強ければ良い、弱ければ悪い、ということではなく、
この4つの因子の強弱のバランスが、その人の生まれ持った個性として備わるということです。
遺伝的な要素が強い「気質」は、人それぞれ生まれた時から持っているものですので、変えることが難しいとされています。
「性格」と呼ばれる3つの因子
生まれつきの遺伝的要素の強い「気質」に対し、環境による影響を強く受け、成人になる頃までに確立すると言われているのが「性格」と呼ばれる以下3つの因子です。
① 自尊心 ・・・自分という存在や自分の言動への信頼感。自己志向。
② 協調性 ・・・他の人の気持ちを考えて行動すること。思いやり。
③ 自己超越性 ・・・自分や現実を超えた自然や宇宙への関心、自分を超えたものとのつながり。
この「性格」と呼ばれる3つの因子は、環境によって成長の過程で培ったもので、変えることができるものだとされています。
このように、生まれつきの要素である変えられない「気質」と、
環境によって変わる「性格」の相互作用に注目していることが、大変画期的な理論となっています。
私もこの理論を初めて知ったときは、とても面白いと感じましたし、勇気づけられる理論だと思いました。
変えられない「気質」を活かせれば、短所は長所になる!
生まれ持った「気質」が私たちの人格の骨組みを作り、
成長の過程で作られる「性格」がその骨組みを肉付けして、私たちらしさが出来ています。
私たちが、物事に対してどう感じるかは、遺伝的な「気質」によるものが大きいですが、
それをどう意味づけるかは、その後に培ってきた「性格」によるものが大きいのです。
例えば、「損害や危険を回避したい傾向が強く、心配性」という気質は、
遺伝的な要因が強く変えることが難しいとされています。
このことを、「気にしすぎだからダメなんだ」「心配しすぎだから出来ないんだ」と、
否定的なことばかり周りに言われて育つと、
それが自分の短所のように感じ、そんな自分はダメな人間だと思うようになるでしょう。
でも、その気質を、
「先のことまで考えられてすごいよ」
「慎重に行動ができるね」と、
肯定的に捉えると、それは長所になりますよね。
短所と長所は常にコインの裏表です。
自分の生まれ持った変わらない気質はどんなものかを見極め、認めてあげることで、
それを長所として捉える見方が出来るようになっていくのではないでしょうか。
「自尊心が低くて、自分を肯定できない、自分に自信が持てない」という方は多いと思いますが、
クロニンジャー博士によると、そうなった原因はこれまでの環境によるものであり、自尊心は変えられる要素です。
「心配性な自分が嫌だ」
「好奇心を抑えられなくて困る」
「こだわりが強すぎて、物事に固執してしまう」
「承認欲求が高すぎる」
そういったお悩み事への具体的な対処法は色々とありますが、
まずは、自分の考え方や捉え方をひっくり返してみましょう。
「心配性だからこそ、いろんな危険を想定して最善の行動を取れる」
「冒険心が強いからこそ、恐れずに新しいことに挑戦できる」
「こだわりを持って最後までやり遂げられるから、完成度が高い」
「承認欲求があるから他人のために頑張れて、人気者になれる」
このように、自尊心を高めることで、今ある気質をポジティブに捉えることができます。
これは、無理なポジティブ思考をすすめているわけではなく、
本当に、あなたの短所だと思っている性格は、物事の見方や捉え方、
そして環境を整えて活かし方を変えれば、大きな長所になるんです。
有名人や著名人、経済的に成功している人も、身近にいる平凡だけど魅力的で幸せそうなあの人も、
きちんと自分の持っている生まれつきの気質を長所として活かし、
短所になりうるネガティブな側面をコントロールしているのではないでしょうか。
変えられる「性格」を変えることで、今あなたが短所だと感じている変えられない「気質」を長所に変えることが出来たら、
あなたの人生にとって大きなプラスになるはずですよね。
■最後に。
いかがだったでしょうか。
人には、変えられない生まれつきの気質がある。
ただ、それをどう捉えるか、メリットにするか、デメリットにするかは、今までの環境によって作られた性格によるもの。
つまり、変えられるものだ・・・と、分かっただけでも、
なんだかホッとしたような気持ちになりませんでしたか?
変えられない気質を変えようと一生懸命努力して、変えられない自分に幻滅するのではなく、
「自分は生まれつきこういう気質を持っている」ということを理解し、自分の気質を認めて、
それをどうプラスに活かすか、ネガティブに出てきている場面をいかにコントロールできるかを考えられれば、
あなたの人生はこれからどんどん好転していくはずです。
心配性で先のことがあれもこれも気になりクヨクヨしてしまい、
「気にし過ぎだよ」と周りから散々言われ続け、
「分かっているけど気になるんだ・・・・気にしすぎちゃってる自分が悪いんだ・・・」
と、深く深く落ち込んだこともあったかもしれませんが、
「気にし過ぎちゃうのは遺伝ですよ!」と、こうして理論で説明されると、
「だから大丈夫!」と、肩を叩いてもらっているようで、
なんだか勇気が湧いてきませんか。
私たちは自分の見ている世界を生きることしかできません。
あなたが、目の前で起こった出来事をどう捉えるか。
周りの人の発言を、どう捉えるか。
その「見方」、「捉え方」次第で、世界は大きく変わっていくのです。
あなたが悩んでいるその性格は、変えられないものでしたか?
「変えられないのか・・・」とガックリ来ているのであれば、その考え方自体は必ず変えることが出来ます。
その変えられない性格を否定するのではなくきちんと肯定できるようになれば、
その悩みや苦しみ自体が、少し和らぐのではないでしょうか?
あなたの見ている世界が、これからもっとあたたかくて優しいものになりますように。
そして、あなたが見ているあなた自身が、もっと自分自身を肯定し、安心して過ごせるようになりますように。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
神田華子でした。