心はどこにある?感情はどこからやってくる?ちょっとした脳科学のお話。

感情を感じるところといえば?心だと思いますよね。

でも、心ってどこにあるんだろう?と言われると、どうでしょう。

うーん、感情がたかぶると、胸がドキドキしたり苦しくなったりするし、「心」っていうくらいだから、心臓・胸のあたりかな?

と、思われる方もいるかもしれませんね。

でも、実は、心を司どっているのは脳なんです。

感情は、脳の情動中枢である“偏桃体”という部分の働きによって、作られているんです。

偏桃体の働きとは?

情動中枢と言われてもピンと来ないかもしれませんが、

情動とは、恐怖、不安、喜び、悲しみなどの、急速かつ一時的に起こる強い快・不快の感情のことで、生理現象や反射的な行動を伴います。

緊張したり不安な時に、胸がドキドキするのは、偏桃体が反応して、脳が身体に心拍数を上げるという指示を出しているからだったんですね。

私たちがものを見たり聞いたりしたときに、その刺激により偏桃体が興奮することで、無意識下で感情が作られ、私たちの意思に関係なく身体が反応します。

例えば、危険なものを見た時であれば恐怖や不安で心拍数が上がったり、すくんだり、とっさに逃げたり、

お腹が空いているときに美味しいものを見れば幸せな気持ちになったりヨダレが出たりするのです。

このように、私たちの感情というのは、目の前の刺激に対して、

脳にある偏桃体が興奮することによって作られているんですね。

快・不快を判断する、つまり好き・嫌いという感情でさえ、脳のほんの一部、大きさにしてほんの1.5cm程度の偏桃体が司っているなんて、人間って、本当に不思議で神秘的で、素晴らしいですね。

ちなみに、偏桃体の「扁桃」というのはアーモンドの和名で、偏桃体の形がアーモンドに似ているからなんですよ。

扁桃腺はよく耳にすると思いますが、こちらも、形がアーモンドに似ていることから扁桃腺と呼ばれます。

扁桃腺と偏桃体は、似ているのは形だけで、場所も機能もまったく違うものですよ!

恐怖や不安がより強く記憶されるのは生存本能

お鍋いっぱいにグツグツ煮込まれたシチュー。

美味しそうですね~。

でも、うっかり手元を滑らせてそのお鍋が足元に落ちてきたとき、

私たちはとっさに熱々のお鍋やシチューが足にかかるのを避けようとしますよね。

それは、私たちが記憶のなかで、「これは熱い。熱いものに触れると痛い。=危険である」ことを記憶しているからです。

でも、そんな経験のない赤ちゃんは、そんな記憶が無いので、むしろ熱々のお鍋に手を伸ばして触ろうとさえしますよね。

そんな赤ちゃんでも、一度お鍋を触って、「熱くて痛い」ことを学習した後は、

お鍋を近づけられるだけでも、怯えるようになるでしょう。

シチューが美味しそう、という快の感情よりも、触ると痛いという不快の感情の方が、

強く記憶に残ってしまうのです。

・・・例えがちょっと下手ですかね。久しぶりに、シチューが食べたくて。。笑

私たちは生存本能として、痛いことや危険なことを強く記憶するように出来ています。

生存のためには、幸せな記憶よりも嫌な記憶や、痛みや危険を感じた記憶の方が重要だからです。

あそこに行くと危ない、と不安を感じることや、ここにいては危険だ、と恐怖を感じることは、

あそこに行くと美味しい木の実が食べられるという幸福感よりも優先される、より重要な感情であり、記憶なのです。

このように、今ではネガティブと捉えられている負の感情や記憶により、私たちは太古から危険を回避し、命を守ってきたのです。

現代社会では暴走しがちな偏桃体

危険に対して恐怖や不安を感じるというのは、生存のために必要不可欠な感情なのですが、

現代では、身の安全が脅かされるような危険な状況には、日常生活で滅多に遭遇しませんよね。

では、どういう時に偏桃体は興奮しているのでしょう。

そう、対人関係での不安や嫌悪感、ネガティブなニュースなど、現代には偏桃体が興奮してしまうストレスフルな要素が、実はたくさんあるのです。

誰かの怒った顔を思い出したり将来のことを考えて不安になったりするだけでも、偏桃体は興奮してしまいます。

偏桃体が過剰に反応し過ぎてしまい、感情が抑えられずに、恐怖や不安、怒りに支配されてしまうことを、「偏桃体ハイジャック」と呼ぶほど、現代では、偏桃体は暴走しがちなのです。

偏桃体の働きを抑制する前頭前野

このように、興奮しがちな偏桃体ですが、その働きをおさえる働きをしているのが、理性や論理的思考を行う、脳の別の部分「前頭前野(ぜんとうぜんや)」です。

この部分こそ、人間が発達の過程で大きく進化させた部位であり、ほかの動物と大きく違う部分なのです。

動物の中でもっとも大きいチンパンジーでさえ、7~10%程度しかないと言われていますが、私たち人間の前頭前野は大脳のおよそ3割を占めています。

前頭前野は、偏桃体が瞬時に判断した情報を処理して、論理的に判断するという役割を果たすことによって、偏桃体が過剰に興奮するのを抑制してくれています。

たとえば、目の前で大型のドーベルマンがこちらに向かって吠えてきたら、

ヤバい!と思って胸がドキドキして足がすくんだり、とっさに走って逃げたりすると思いますが、

頑丈そうな鎖でしっかりと繋がれているのを見ると、少しずつ落ち着いてくるのではないでしょうか。

こういった感情の変化は、前頭前野の働きにより、「ここでは危険を感じなくて大丈夫」と、判断しているからなのです。

しかし、この頼りになる前頭前野、ストレスにより、働きが鈍くなってしまうことも分かっています。

強いストレスに常にさらされていることにより偏桃体が過剰に反応している上に、前頭前野の機能が低下していると、

偏桃体の暴走を制御することができずに、結果として必要以上に恐怖や不安を感じてしまうのです。

更に、恐怖や不安というのは、人間の本能としてもっとも優先される感情であり、

これらの感情はスピードが重要です。敵に遭遇した時に、危険を回避して命を守るためには、悠長に考えている暇はないからです。

そういった偏桃体の特性がゆえに、もし偏桃体が過剰に反応してしまい、それが前頭前野によって適切に抑制されていない状況だと、

少しの刺激でもすぐに、恐怖・不安・嫌悪感・怒りなどを感じてしまい、身体的な緊張が続いてしまいます。

また、前頭前野は集中力や自発性、計画性なども司る部分ですので、

この部分が傷ついたり衰えてくると、生活がだらしなくなったり、積極性や創造性がなくなったりします。

そうした状況が続くと、うつ症状や不安障害などの、心の病気に発展してしまいます。

こうして考えていくと、うつ病だから意欲がなくなってしまったのか、前頭前野の機能が落ちているから意欲がなくなりうつ病になったのか、卵が先か鶏が先かのような議論になってしまいそうですが、

要は、脳の機能と私たちの感情や意欲というのは、とても深い関りを持っているということですね。

前頭前野を鍛えよう!

では、そんな前頭前野の機能を衰えさせないために、どうしたら良いのでしょうか。

そもそも、脳は目に見えない部分なので、筋肉のように自分で鍛えられるだなんて、意識したことはあまりないですよね。

でも、脳も身体の一部ですから、筋肉と同じように鍛えることができるんです。

特に、前頭前野や記憶を司る海馬という脳の一部の細胞は、大人になってからも増やすことが出来ると研究で明らかになっています。

人の脳は、いくつになっても成長できるんですね!

前頭前野を鍛えるためには筋肉同様、日ごろから適度な負荷をかけてあげることです。

特に、知的好奇心が一番の栄養になります。

具体的には、知らない人と交流してみたり、今まで読んだことのない分野の本を読んだり勉強をしてみたりすることです。

新しいレシピでお料理をしたり、行ったことのない街を散歩してみることなんかも良いですね。

そういった適度な刺激・負荷を脳に与えることで、脳を鍛えることができるのです。

偏桃体を鎮めよう!

同時に、感情を司り興奮しがちな、偏桃体を休ませることも意識したいですね。

偏桃体の過活動を抑制するためには、瞑想が一番効果的だとされています。

ただ、馴染みのない方には最初は難しいかもしれません。

心を無にする、雑念を振り払う、こういったことが簡単に出来る人は良いのですが、私のように煩悩にまみれたあなたのために、簡単なやり方を紹介しますね。

  • まず、肩をすくめてギューッと力を入れる。
  • 一気にストンと落とす。これで肩の力が抜けます。抜け切れていないと感じたら、何度か繰り返してください。
  • あとは、ひたすら自分の呼吸に集中してください。

息を吸って~・・・・

吐いて~・・・・

特に息を吐くことに集中するのが大切です。

4秒吸って6秒吐くとか、3秒吸って7秒吐くとか、3秒吸って3秒止めて6秒吐くとか、

色々な説がありますが、そこまで細かく考えなくても、

ゆっくり吸って、倍くらいの時間をかけ吐く、という呼吸のリズムを意識できれば良いかなと思います。

私の場合は、大体4秒吸って6秒吐くというのが、リズムを取りやすくて合っているようです。

この呼吸法は、不安障害やパニック障害の方の発作時にも効果がありますし、アンガーマネジメントにも深呼吸は有効です。

呼吸に意識を向ける、自分の呼吸のリズムを感じるというのは、感情にまつわるいろんな場面で使えそうですね。

この呼吸に集中する時間は、ストレスを感じたときだけでなく、日常生活で習慣的に取り入れると良いとされています。

たとえば電車に乗ったら最初の1駅は呼吸に集中するとか、寝る前ベッドに入ったら10回だけ目をつぶって呼吸に意識を向けてみるとか、短い時間からでも良いので、是非取り入れてみてくださいね。

ちなみにウォーキングや咀嚼活動などのリズムのある動きも、偏桃体を鎮める効果があると言われています。

自分が好きなことをして楽しいと感じているときや癒しを感じているときには、脳もリラックスできますので、

そういう時間も、ほんの数分でも構いませんので、意識的に毎日取り入れるようにしてくださいね。

自分が何に癒されるか分からない、という人には”コーピング”という方法を試してみるのもお勧めです。

別の記事で紹介しますね。(書いたらここに追記します!)

まとめ。

今日は、感情の正体である脳の仕組みについて調べてみました。

心の問題に立ち向かうとき、心理学的な観点から考えることが多いかもしれませんが

脳科学的な観点から見てみると、また違った印象を持たれたのではないでしょうか。

心と身体はつながっている、それはまさに、その通りなんですね。

心はあなたの身体の反応そのものなんです。

疲れたら身体を休める。身体を休めることで、脳を休め、心を守る。

そんな、生物としては当たり前のことが、なかなか出来にくい社会になっているとは思いますが、

自分の心と身体を大切にする、その意識を是非、持ち続けて頂きたいなと思います。

以上、ここまで読んでくださってありがとうございます。

神田華子でした!

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